今日のエッセイ-たろう

地域の才能を発揮する。 2025年6月19日

それぞれの町には、それぞれの都市計画がある。こっちは歴史文化ゾーン、あっちは農業ゾーン、そっちは工業だとか、そういった感じ。全国的な事例に通じているわけじゃないけれど、とりあえず掛川にはそうした基本計画のようなものがあった。いま、それがどれほど機能しているのかわからないけれど、ざっくりしたイメージはあるらしい。

ゾーンごとの特色として打ち出すのは良いのかもしれないけれど、集約するのが良いのかどうか。明確な答えを持っているわけじゃないけれど、歴史を振り返ってみれば、自然にゾーン分けされていただろうとは思う。東海道という幹線道路沿いに宿場町が形成されれば、自然とそこは商業が中心になるだろうし、お城の近くは政治色が強くなる。郊外は農村だし、農作物が集約されるような交通の要衝には手工業が発達する。とかね。

自然発生的なゾーンは、たぶんその地域の自然環境に起因するのだろう。川が流れているとか、主要な道路があるとか。お城のようなものは人為的な建造物ではあるけれど、そこに城が作られたということは地形的に適していたからだ。自分たちで判断しているようなふりをしていても、やっぱり自然環境に合わせて都市が出来上がっていったように見える。

実は、この自然環境に起因した都市計画という考え方が大切だと思っている。

我が家の近くに、未開発地域と呼ばれるエリアがある。本音で言えば、未開発という表現そのものが気に入らないのだけれど、それは一旦横においておく。ローカル道路ではあるものの、東西南北に通じる幹線道路がクロスするあたりで、なおかつ駅からは徒歩でも15分程度の距離で、高速道路の出入り口にも近い。その利便性もあってアミューズメントパークが出来て、その周辺にはいくつかの商業店舗が並ぶようになった。

幹線道路が開通する前は、そこに果樹園があり、茶畑や水田が広がる空間だった。今でもいくらかの水田が残っているけれど、ほとんどの山は切り崩されたし、畑は商業施設などに置き換えられた。そして、この地域は商業ゾーンとして開発を進めたいというのが行政の意向だ。

断っておくけれど、これを自然破壊だとか乱開発だとか言うつもりはない。周辺環境を考えれば、農村や手つかずの山のまま放置していくのはもったいないというのは、よくわかる。なんせ交通の便が良いからね。ぼくが提案しているのは、都市開発の地図を描くときには、地質地図を重ねて欲しいということ。産総研の地質調査総合センターのサイトに地質情報の地図がある。これをレイヤーとして重ねて土地を見るのである。できれば、それぞれの地域に足を運んで地質や地形に着目して観察したいところだ。

土壌がとても良くて、水利もあって、それなりの面積を確保できるという場合、そこは農業適性がとても高い地域かもしれない。そこは、未開発なのではなくて稲作に適した地域だから稲作農家が多かったということかもしれないのだ。だとしたら、とてももったいない。人間と同じように考えれば、才能を活かすという発想だ。

なかには、何でもこなせるマルチプレイヤーもいる。それと同じように。どんな土地活用をしてもそれなりに効果が高いという土地属性もあるだろうとは思う。じゃあ、だからこそ、このマルチプレイヤーをどう使うかというのは真剣に考えたほうが良いと思うんだ。カードゲームでもジョーカーの使い所って悩むでしょう。例えば経済だけを指標にしてショッピングセンターを誘致したとして、交通の便を考えればそれなりに利益が見込めるし町は活性化する。だけど、それが「今」のジョーカーの使い方として良いのかというのはしっかり考えたほうが良いと思うんだ。100年くらいのスパンで見て、本当にウェルビーイングに繋がっているのか、とか、そういうことも考えて、土地の才能を活かすことを検討したいところだ。

商業施設を作るとしても、ショッピングモールを建設するとか、雑多な商店街とするというのもあるけれど、農と食を中心としたアミューズメントパークのような施設だって良いじゃない。

例えばこんな感じ。野菜や米、お茶が栽培されていて、体験もできる。それらを活かした食品加工施設や飲食店がある。味噌蔵とか酒造場とかもあったら良いな。学びの空間があって、研修も行えるし、もちろん宿泊施設もある。で、その空間の中に衣料品や生活雑貨を取り扱うショップもある。とかね。あぁ、これはぼくの個人的な願望が強く出ちゃったな。食のテーマパークを作りたいという気持ちは今でもあるからね。

今日も読んでいただきありがとうございます。才能を活かすって、人だけのことじゃないと思うんだよ。それぞれの土地が持っているポテンシャルというのは、多くの人が考えているんだけどさ。経済以外の指標でも才能をちゃんと見る。経済利益につなげるのはその後で良い。ちゃんとした提案書作ろうかな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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