今日のエッセイ-たろう

「知ってる・出来る・やる・続ける」の格差。 2024年2月25日

「ええ、売名行為ですよ。みなさんもおやりになったら良い」

杉良太郎さんのセリフなのだけれど、これはしびれるなぁ。ぼくは知らなかったのだけれど、杉良太郎さんはずっとボランティア活動をし続けてきたらしい。もうずっと。だから、世間一般のイメージする「華やかな芸能人の生活」とは無縁の人生なのだそうだ。前述のセリフを知ったのは最近のニュース記事でのことだった。被災者支援の炊き出しを行ったところ「金持ち芸能人の売名行為」と揶揄されたらしい。それに対する応答がこれだ。

行動している人にしか言えない強さがある。ぼくが心を震わせるのは、杉さんの地道な行動力だ。実は、この方のことがちょっと気になっていたんだ。きっかけは、掛川城の御殿に展示されている二揃いの甲冑。実は、杉良太郎さんが所有していたものを寄贈してくださったのだ。始めてそれを知ったとき、頭に浮かんだのは「なぜ?」であった。

寄贈された2つの甲冑は、時代劇役者のシンボルとして30年以上前に購入されたそうだ。ひとつは松平忠喬(マツダイラタダタカ1683-1756)のもの、もうひとつは太田資俊(オオタスケトシ1720-1764)のものだ。偶然にも、ふたりとも掛川藩主だったことがある人物である。これを知って、掛川市への寄贈を心に決めたのだという。

ここまでは、寄贈当時(2017年3月28日)の新聞記事で知った。ただ、それでもピンとこない。たったそれだけの理由でこんなことするだろうか。さほど思い入れのないモノだったのだろうか。それとも金持ちの酔狂だろうか。などと勘ぐったりもした。どうにも気になったものだから、調べてみることにしたのだ。と言っても、インターネットで検索しただけだが。

結局、どんなつもりで寄贈したのかは新聞で見た以上のことはわからなかった。その代わり、杉良太郎という人がどんな人なのかを垣間見たような気がしたのだ。インターネットの情報で、彼の人となりを言語化したものもあるにはあった。が、男気があるとかかっこいいとか、そういう形容詞っぽい表現は見られなかった。発言が取り上げられているものもあったけど、特に目立ったのは、どのような行動をしてきた人物なのか、である。

「知っている」と「出来る」と「やっている」の3つの間には大きな隔たりがある。

困っている人を助けたら良いことは知っている。何をすれば良いかも見当がついている。ちょっと勉強すれば、そのやり方もわかる。スポーツ観戦をしていてあれこれ言うオッチャンとか、したり顔で誰かの行動を解説してくれる人がこれにあたるんじゃないかな。

知っていることを実行可能だというのは、なかなかハードルが高い。実際に炊き出しに必要な道具を揃えたり、仕事を休む調整をしたりとけっこう大変だ。お金だってかかる。杉さんが自己資金だけで行ったわけじゃないことはちょっと調べればわかる。ボランティアのための資金調達を行ったのだ。知恵を絞り、どうしたら実現できるかを考え抜いて、「出来る」を作り出した。

例えば営業をするにしても、電話をかけてアポを取れば良いことは知っているが、なんらかの事情で「出来ない」ということに「してしまっている」なんてことがあるだろう。「出来ない」状況なんて、いくらでも作り出せるのだ。それを突破して「出来る」に置き換えられるというのは、ただ知っているとうのとは大きな違いだろう。

やろうと思えば出来る。がやらない。「やれば出来る」と言われ続けて、ずっとやらないで来たという人は少なくないのじゃないだろうか。ぼくがそれだ。子供の頃から言われていたような気がするのだが。だから、「実際に行動する」っていうのは容易くない。料理本を読んでレシピを知っている。料理の基礎知識も技術もあるから、やろうと思えば出来ないこともなさそうだ。手間を掛けてやれば美味しくなることくらい、百も承知だ。だけどやらない。

「行動する」というのは、テクニックでもなんでもないのだ。わかっていて、実行するスキルがあるならやれば良いんだから。あとは、心の問題だろうと思う。やらない理由をくっつけているだけなのだ。だから、杉さんの行動を見て揶揄してみたり、したり顔で評論してみたりしてしまうのだろう。そういうのって、ホントに・・・ダサい。

自信を持って「やっている」とは言えないかもしれない。だけど、杉さんのように行動できる人になりたいという憧れが有る。子供の頃からのコンプレックス。執着しているんだろうな。

職場の誰かが困っているなら、すぐに動く。担当じゃないからって、やらない言い訳を作り出すんじゃなくて動く。フォワードだって必要に応じてディフェンスするし、デフェンスだって攻撃参加するし、味方のフォローをする。実際に動く。そうでありたいという欲求がぼくの執着かな。

今日も読んでくれてありがとうございます。行動するの先にあるのが、「しつこくやり続ける」なんだよね。杉良太郎さんのセリフにしびれるのは、やり続けてきたからだろうな。伸びている企業の経営者って、だいたい「しつこくやり続ける」タイプの人が多いんだよね。というのはわかっているんだよ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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