今日のエッセイ-たろう

「答えは現場にある」というけれど、現場はどこ? 2024年7月11日

掛川の名物はなんですか。と問われれば、ほとんどの市民はお茶だと答えるだろう。もちろん、それ以外のものもあって、いちごやメロン、キウイフルーツなどの果物も豊富だし、芋もあれば葉物野菜もある。それでもやっぱり看板になるのはお茶だ。

市内のスーパーや道の駅で買うことが出来るのは、当然ながら掛川茶である。それ以外のものを買うことは出来ないし、他県産のお茶を売り場に並べようものなら何を言われるかわかったものじゃない。まぁ、そういうものだろう。

基本的に、一次産品は地元モノになる。県外産の野菜もあるけれど、やっぱり地元のものが中心。で、それにプライドを持っていることも大切だし、実際にそれが美味しいと感じることも多い。ただ、これが問題になることがある。というと、大抵の場合地域の色んな方からお叱りを受けることになるのだけれど、実際にそうなのだ。

例えば東京でお茶をよく飲む人は、普段どんなお茶を飲んでいるのだろう。知覧茶だろうか、八女茶だろうか、島田茶だろうか。紅茶も飲むだろうし、コーヒーも飲むはずだ。

一次産品の生産力が弱い地域、つまり東京のような都会では、外部からやってくるモノをお金を出して購入する。東京にとっての外部とは、日本中のあちこちである。あらゆる地域の物が集まるのだから、掛川茶は他の地域のお茶と並列で比べられることになる。幸い、掛川茶は比較的高評価を得ているようだけれど、掛川人は掛川茶以外のお茶を知らない。マーケットを知らないということだ。

美味しい。というのは、実に相対的なものだ。うちの大根が一番うまいと言っていても、実はマーケットではそう思われていないかもしれない。食べ比べてみたら、別の地域や農家の大根の方がずっと旨いかもしれない。専門家ならば、食べ比べればすぐに分かる。掛川茶の評価は、10年以上の長きに渡って高評価を得続けているのだから、事業者の方々はマーケットの動きをずっと見続けているのだろう。実際、鹿児島茶が伸び始めた平成の頃には、すぐに反応した。

現場が大切というのは、生産の現場だけでなく、消費の現場も大切なのだ。それを知らなければ、「美味しいもの」を作り続けることは出来ない。何が特徴的で、どこが良いのか。解像度高く客観的に自社商品を観察すること。マーケティングの基本といえば基本だ。

観光事業をどうにかしたいと思っているのだけれど、なかなかどうにもなっていない。それは、消費者の立場に立っていないから、ということが考えられる。担当者が観光をしていないのだ。何が面白いのか。何と比べられるのか。どういうシチュエーションで、旅行先を考えるのか。そのきっかけは何なのか。それがわからない。そういうぼくもよくわからない。というのは、あまり観光旅行に行っていないからだ。

コロナ禍以前に、東南アジアからの観光誘客計画に関わったことがある。そのために、タイで開催された旅行博に出展していて、何度かそこにスタッフとして参加したこともある。このとき、最も学びが多かったことは、ぼく自身がバンコク周辺の観光をしていて、現地の人々と交流したことだった。自分が「外国人観光客」を体験したからこそ気がつくことが出来たのかもしれない。

さて、東京に暮らしている人たちから見て、旅行先の選択肢のひとつに掛川市が入るためには何が必要なのだろう。何が良いところで、どこと比較されるのだろう。「美味しい」と同じ様に「楽しい」も相対的なもののはずだ。ぼくらは、もっと消費地のこと、消費者の視点を知らなくちゃいけない。

今日も読んでいただきありがとうございます。ホントはね。仕事以外の食事も、なるべくいろんな料亭に行かなくちゃいけないんだ。ちっとも気持ちが休まらないんだけどさ。うちは、掛川は何とどう比較されているのか。そういうのを知らないといけないね。

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武藤 太郎

1988年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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