今日のエッセイ-たろう

「食べる」も教育のひとつ。 2023年10月10日

今年も掛川祭が終わった。数年ぶりに、元通りの祭りが開催されて、地域の人達の顔にも笑顔が見える。年に一度のことではあるけれど、こうした恒例行事は時の移ろいを感じさせる。田舎では、ようやくマスクを外したひとが増えてきたところだけれど、祭りは日常が戻ってきたことを体感させてくれるだろう。やっと、日常が返ってきた。と。

ぼくは、仕事の都合も会ってほとんど祭りには参加できなかった。けれども、やはり時の移ろいを感じることになった。ほんの数年のことだったけれど、小学生が高校生になっていたり、高校生は青年衆に入って盃を交わす相手になった。年に一度、まつりの期間だけしか顔を合わせない間柄だからこそ、余計に子どもたちの成長を感じるのだろう。

人は成長する。子供は体が大きくなり、引き締まった肉体からはアクティブな動きに柔軟に対応する。たくましさを感じられるのは、山車を引き回す動きにあらわれている。かつてやんちゃだった青年が、すっかりと大人になって、一端のことを言う。周囲を使い、知恵と経験を駆使して見事に調和を保つ存在となった。

体も心も頭も、それぞれに成長する。ただただ、体だけが大きくなるわけじゃない。体のサイズが大きくならなくても、知識を学び経験を積んだら、内面的な成長がある。中年にもなると、肉体的な衰えを感じずにはいられないのだけれど、学びは確実に成長を促してくれる。健康でいるために運動をすることと、学ぶということはきっと同列なんだろうな。学びもまた成長という意味で、心身の健康に貢献するのだろうか。

子どもたちが学校に通うのは、彼らが成長できる環境がそこにあるからだ。現代において、これまでの教育がフィットしているかという議論はあるけれど、とりあえずはそこに用意された環境がある。ぼくらが、たべものラジオのような情報番組を楽しむことが出来るのは、少なくとも一般教養としての最低限の知識を詰め込んだおかげでもある。あれほど面白くないと思っていた物事を、面白く感じられる。すなわち、嫌々ながらも覚えていたからだ。

ところで、体の成長についてはどうだろう。学校には体育という科目があるけれど、他の学問に比べて少々足りないような気がする。なにもアスリートになるほどのことをしなくてもいい。もう少し、体の成長に貢献することにも力を入れても良いのじゃないだろうか。

わかりやすいところでは、給食だ。給食は、栄養学を学んだ栄養士が子どもたちの健康や成長を考えて、限られた予算の中で献立を考えてくれている。だけど、その思いや工夫を理解するだけの知識が、現場である学校にはあるのだろうか。

今では考えられないことだけれど、ぼくの小学生時代には、昼休みも教室に残って完食させられていた子供がいた。偏食は良くないというのだけれど、それはどういう理由なのかを訪ねても答えてくれる先生はいなかった。消化能力や必要な栄養素は個々に違うのだけれど、それを考慮できる人は皆無だっただろう。

給食をパーソナライズするのは、当時も今も仕組みとして難しい。そんなことをやろうとすれば、給食センターはあっという間に破綻するかもしれない。かつてのように、各学校に給食室があって、なおかつ児童数が少ないという状況ならばある程度可能かもしれないけれど、実にコストがかかる。

コストといえば、給食費は未だに家庭負担だ。一部の自治体では独自に行政が負担するようになっていると聞くけれど、それはまだ例外でしか無い。成長という視点で考えれば、無償で教育を提供することと、無償で給食を提供することは同義に見える。

体が健康で、体力があって元気である。これは、運動だけではなくて勉強するときにも必要なのだ。なんとなく疲れているときには、本を読んでもなかなか頭に入ってこない。集中力も続かない。これはぼくの実感なのだけれど、そういうものなんだろうと思うんだ。

経済とか提供事業者のこととかを言い出したら、たしかに調整は大変なんだとは思う。だけどさ。国民国家として、教育を提供する義務を負うということを決めたんだ。そういう理念でこの国は存在している。であれば、理念を実現するためにどうするかってことを考えるのが筋なんじゃないかと思うんだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。たまたま、教育の無償化に関する記事を読んだんだけどね。給食に関しては、まだ世帯収入によってという条件が付帯していて、全面的にということにはならないらしい。ぼくなりに、教育ってなんだろうって考えていたときに、地元の子どもたちを見て思いついたんだ。どう思う?

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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