昨日、音楽の話を書いていて思い出したことがある。ドラムの練習をしているときのことだ。叩こうと思うフレーズを声に出すと良いという。タカタカタン。タカトン。スッタンタカトン。
周りに人がいる状況でいきなりやりだすと、変な目で見られるのだけれど、これは意外と効果が高いのだ。例えば、音楽を聞いていて「今のフレーズかっこいいな」と思ったとするじゃない。そしたら、そのフレーズを言葉にしてみる。ときには早すぎて口にできないこともあるのだけれど、その場合はスピードを落として声にすれば良い。で、フレーズを口ずさむ事ができるなら、それは大抵の場合演奏できる。
もちろん、再現するためにはそれなりの技術が必要だし、練習も必要。それでも、ちょっと練習しさえすればそのフレーズは遠くない未来に演奏できる。そう言われて、実際にやってみたのだけれど、本当だったのだ。これは少々驚きだった。逆に、口ずさむ事ができないフレーズは、なかなか演奏できるようにならない。
口ずさむ事ができるということは、どのような手順で太鼓を叩いているのかがイメージできているということだ。リズムもわかっている。ドラムセットでの演奏ではないけれど、少なくとも口で演奏できているといえる。口というのは、人間にとって最も身近な楽器の一つだ。おそらく、最もコントロールが簡単なものの一つだろう。一度、簡単な楽器で演奏できるようになっておいてから、技術の必要な楽器で再現する。そんなステップなのかもしれない。
意外と知られていないけれど、楽器の練習中にずっと口が動いているという人も結構いるらしい。そういえば、ぼくも口ドラムをしながら演奏していた。そうすると、割りといい感じに演奏できるようになったりするのだから面白い。
イメージが出来ている。おそらく、これが大切なのだろう。次の行動がどんなもので、どこをどう動かせばよいかということが、予め分かっている。体はそれをトレースしていく。このイメージを、より具体的にするために「口ずさむ」という行動が効果を発揮するのかもしれない。
楽器の演奏ではなくても、似たようなことはあるだろう。年のはじめに、新年の抱負を書く。今年はこんな年にしたいな、ということを言語化して、それを紙に書く。このときに、その年末の自分の姿をイメージするというのが良いのかもしれない。体はどうなっているか。仕事はどうなっているか。朝起きてから寝るまでの生活はどのようなものか。できるだけ具体的にイメージする。
それが必ずしも実現するとは限らないけれど、具体的なイメージが出来ていると具体的な行動に変換しやすい。規則正しい生活をするためには、まずどこから手を付けるのか。などと、具体化していく。そうすると、次の行動がわかる。次の行動がイメージ出来ているから、それに合わせて行動することが出来る。そんなことなのかもしれない。
事業計画というものは、そういう意味ではとても有効なのだろう。とかく、小規模事業主は細かな計画を作らないことが多い。経営者の頭の中にイメージが有るとは思うのだけれど、それがぼんやりしていることも多い。そういう僕自身も、その傾向がある。
だからこそ、言語化する。とりあえず、ノートに書き出してみる。未来予想図をできるだけ明確に、詳細に書き出してみる。数字だけでなく、会社の日常まで細かく想像して文字にしていく。イラストでも良いかもしれない。で、それを実現するために何をするのかを書き出していくという次のステップに移っていくのだ。
そう言えば、サラリーマン時代は経験がないことを思い出した。自分自身のイメージもなかったし、会社からそれを提示されたことも少ない。会議などで提示されるのは、具体的なステップであることのほうが多い。それを実行した先に作り出したい世界観まではあまり聞いた記憶がない。社員総会で経営者本人が語るときに、やっと知る。そうか、ぼくらの業務はここに繋がっているのかと、そのときに気がつく。もしかしたら、似たような経験をしたことがある人もいるかもしれない。
社長はいつも夢を語ってばかりいる。そんなの夢物語だよ。という声を聞いたことがある。なのだけれど、経営トップにしてみれば、それがもっとも重要なことのひとつなのだろう。どんな世界を作り出したいのかを言葉にして、伝えること。その言葉を介して、未来のイメージを共有すること。なんともシンプルな話だけれど、やっぱり大切なことなのだ。
今日も読んでくれてありがとうございます。当たり前のことなんだけど、案外出来ていないってことが多いよね。そもそも、今年の新年の抱負なんて、言葉にしていないし。今更ではあるけれど、改めて言語化してみようかな。