スペシャリストになると、他者と通じるものが生まれる。2022年10月6日

専門分野をトコトン掘り下げた人同士は、まったく違うジャンルなのにやたらと共感し合うことがある。不思議なんだけど、そういうケースをよく見るんだよね。

お気に入りのポッドキャスト番組があってね。「低空飛行」っていうんだけど、デザイナーの原研哉さんがいろんなジャンルのゲストと対談している番組なんだよ。時には同じデザインの関係者や、建築関係の人がゲストとして登場するけれど、全く違うジャンルの人をゲストに迎えることもある。個人的に印象深かったのは土井善晴さんとの対談かなあ。ま、これはぼくが食に関わる生活をしているからだろうけど。

なんだろうなあ。トコトン掘り下げた場合、地下のずっと深いところで繋がっている。地下水脈みたいなのがあるんだろうね。その地下水脈ってなんだろう。ジャンルを問わずつながっているのなら、個別具体の話じゃないんだろうね。もっと抽象化された概念というか思想というか、そういった考え方みたいなものが共有されている空間なのかもしれない。

なんだかわからないけれど、一点突破でトコトン突き詰めるという行為が真理に近づくひとつの道なのかな。

こういうことを考えるときには、既存の哲学を紐解けばヒントがあるはずだ。と、言ってはみたものの、哲学史なんて全然わからない。そういえば、禅宗のなかで語られる概念に近いものを感じるんだけど、どうなのだろう。茶や書もそうだし、食もそうだよね。以前は経典を勉強しているイメージを持っていたんだけど、そうでもなくて、なにかの動作をを極めようとしているみたいに感じるんだよね。料理なら料理に全力で集中する。そうすることで、なにかたどり着けるところがあるってことなんだろう。

そういえば、日本の教育ってそうだったらしいよ。昔は。昔って言っても、戦前くらいかな。どこで読んだのか、聞いたのか忘れちゃったんだけどね。尋常小学校って聞いたことがあるよね。今で言うところの小学校かな。だから、尋常小学校の次は尋常高等小学校に進学するものだとばっかり思っていたんだけど、どうやらそうでもなかったらしい。高等小学校は、進路のひとつ。中学校や実業学校も選択肢。そもそも義務教育は小学校までだった。

かなりおぼろげな記憶で書いちゃっているんだけど、詳細はおぼえていないので気になる人は調べてほしい。特にぼくの印象に残っている言葉があって、そちらが今日の話と通じるところだと思うんだ。もう江戸時代とかの話なのかもしれないけれど、例えば剣術を極めようとするじゃない。一生懸命に稽古をして、なんとか師範と呼ばれるような人物になる。そうすると、剣の腕だけではいけないということに、やっぱり気がつく。そこで、改めて教養が必要だなってことになって学び直す。そういう流れがあったというんだ。

あやふやな記憶だから、実際のところがどうだったかわからないんだけど。仮に、このスタイルだったとすると、割りとスペシャリスト教育に近いのかな。ひとつのジャンルでスペシャリストになって、そこからジェネラリストへと広げていくイメージ。だとすると、現代はジェネラリスト的な教育に見えてしまう。それは、単に義務教育期間が長いからかも知れないけどね。いまでは高校卒業までは、学びの期間という感覚が定着しているからね。ここまでの期間で基礎教養を学んで、そこから専門課程に進むのだから、まぁ一緒といえば一緒か。

長い期間基礎教養を学んできているせいか、社会人になってもジェネラリスト志向は多いかもね。えっと、過去の社会と比較したらってはなしね。どちらが良いのかはわからないんだけど。スペシャリストばっかりだとバランスが悪いけれど、一方でリスペクトもあると思うんだよね。力自慢もいれば、話が上手い人もいれば、知識が豊かな人もいて、それぞれにリスペクトする。「おれは頭の方はぱっとしねぇんだけども、ここはご隠居の言う通りにやりますんで、いっちょ言いつけておくんなさい。なぁに、腕っぷしの方はこれでもちょっとばかし自信があるんで」なんてのは、落語の中に登場する熊さんあたりのセリフ。「流石だねぇ。この界隈じゃあ、大工仕事にかけちゃ熊さんの右に出る者はそうはいないよ。」

今日も読んでくれてありがとうございます。全ての能力を均等に伸ばすっていうのは、なかなか難しいのかもしれない。なにかひとつの「得意」を取っ掛かりにして、そこから掘り下げていったり、解釈を広げていったりして他のことにも通じていくっていうのかな。そういうのが向いている人。たくさんいそうな気がするのよ。そういえば、市役所に勤務している知人がそれを実践していたな。部署を移動しても関係ないくらいのスペシャルな能力を作るっていって、実際にその通りになったし。史跡文化財関連で、その人の右に出る者はそうはいないんだ。

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