今日のエッセイ-たろう

出口戦略で考える「私達はどう生きるか」。 2023年11月3日

大仰なタイトルをつけてしまった。

ずいぶんと前のことになるけれど、とある団体に所属していたことがある。勉強会なのだけれど、経営の実務と言うよりも、心構えとか解釈とか精神的な部分が中心だった。正直なところ、宗教っぽいフォーマットがあって、それっぽい活動をする人もいる。だから、うっかりすると勉強会としての意味を取り違えちゃう人もいるかもしれないんだけど、ちゃんと距離感を持って学ぶ場として活用すれば、思考の糧となることは得られると思う。

良い学びの場に出来るかどうかは、自分次第なんだろうな。なんというか、どっぷりハマってしまう人もいるし、学びよりも組織論に傾斜していく人もいる。そのあたりは、現代に合わせてリフォームすればよいのにと思うのだけど、とっくに退会しているので外野の意見。

さて、若かったぼくがなにをどう学んだのかという話だ。いくつか心に残ったことがあるのだけれど、今日はひとつだけ取り上げる。得るは捨つるにあり。

いろんな解釈が出来てしまうのだけれど、まずは出すことが大切だよということだ。呼吸という言葉をとっても、息を吐くのが先にあって、その後に吸う。阿吽の呼吸というけれど、これも吐くのが先。誰かのために与えるからこそ、いずれ巡ってやってくる。というのは、拡大解釈のような気もするんだけど、どうやらそういうことらしい。

とりあえず、出口をしっかりと見定めて行動しようというのは、どこかビジョナリー経営にも繋がるような気がした。と感じたのは20代の頃の話。

で、当時はまだ経営のことなんかこれっぽっちも考えていなかったから、とりあえず自分の人生について考えてみたのだ。なにかしらの目的地を定めて、それにむかって生きていく。なんだか、高校生の時に訓戒として聞いたことがあるような気がする。目標から逆算するんだって。だから、そんなものかと思って妄想してみたのだ。

人生の出口ってなんだろう。と考えたら、シンプルに命が終わるときだろうということに思い至ったのは一瞬のこと。後から聞いたら、ほとんどの人は職業人としての出口を考えるのが一般的らしい。だけどまぁ、とにかく自分の葬式を想像してしまったのだ。どんな葬式なんだろうな。

物語の中で、死に様として好きなシーンがある。月夜の晩に船を浮かべて、盃を傾ける。ぽちゃんと盃を水に落としたときが命の尽きた時。というのは、たしか孟子だったかな。中学生の頃に国語の先生が語っていたおぼろげな記憶でしかないのだけど、風流な死に様だなと思ったのは覚えている。

もうひとつは漫画「封神演義」の中の登場人物。殷周革命の中で、武王の父文王が亡くなるシーンだ。後を継ぐ武王と太公望を枕元に呼んでメッセージを伝えた後のセリフが印象的だった。「参ったな。もう何もすることがない。」

ぼんやりとした記憶だけれど、なんとも人生をやりきった感があって、ほほえみながら息を引き取っていく様は憧れを抱いた。

いろんな死に様が、様々な物語となって歴史上の人物や架空の人物の人生を描き出している。

とある講話の中で聞いたのは、講師の方の先輩のお父様の葬式の情景。戦後の貧困の中で苦労して念願の教師になったという方だそうだ。亡くなられた時、息子は東京から駆けつけたのだが、そこで思わぬ光景を目にする。お前のお父さんのお陰でいまの私がある。という言葉を、とても多くの人たちから言われたそうだ。特に葬儀の告知もしていないのに、地元の仲間から連絡があって遠方から駆けつけた教え子たちも少なくなかったそうだ。惜しい人をなくした。人生を変えてもらった。胸が暑くなる話だ。

さて、ぼくの葬式はどうなるだろうか。まだまだ、あと半世紀くらいは現役でいるつもりなのだけれど、妄想するくらいはしてみる。20代のぼくが妄想したのは、人々に惜しまれる姿。人生が変わったとか、良い影響を受けたとか、そんな声が次世代に届くような場。

どんな生き方をしたら、そうなるのか未だによくわからないけれど、もう20年以上経ってしまった。人様のお役に立つような人間になること。というのは、子供の頃に言われたこと。あんまりこだわると、そこの執着が生まれてしまうような気もする。

偉業を成し遂げたいというような野望は、はるか前にどこかに置いてきた。何者かになりたいという立身の気持ちも無くはないけれど、あまり強くはない。憧れと言えば、小説「一夢庵風流記」の中にある一節。「九品蓮台に至らんとする欲心もなければ、八万地獄に落つべき罪もなし。生きるだけ生きたらば、死ぬるでもあろうかと思う。」最後の「死ぬるでもあろうかと」という感覚がなんとも良い。

今日も読んでくれてありがとうございます。学びを直接受け取ったわけじゃないんだけど、学びや思考を深める機会としては良かったんだ。自分がこれからどんな人間になりたいのかを考えるっていうのは、割と時間がかかるし、じっくり向き合う態度も必要になると思うんだ。そういう意味で、20代で機会があったのは良かったんじゃないかな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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