今日のエッセイ-たろう

想像力が繋ぐ物語。2022年9月13日

人間っていうのは、よほどの経験があったとしても自分以外のことはよくわかっていない。たぶん、本質的には一生かけてもわからない。すごく冷たいようだけれど、実際のところそうだと思うんだ。だってさ。お腹が痛いと言っていて、ズキズキだとかチクチクだとか表現してもらっても、ぼくの想像しているそれと同じかどうかなんてわからないじゃない。

わからないんだけど、わかったような気になっているだけ。というのがホントのところなんじゃないかな。だから、過去にツライ体験をしたことがある人のほうが人に優しくできるって、そういうことになるんだと思うよ。

それでも、わかったような気になっているだけなんだけど。

だからこそ、一生懸命想像するってことが大切なんだとも思うんだ。ホントのところは、全くわからない。だけど、なんとか自分の経験の中から近いものを見つけ出して、想像する。想像の中で体験してみて、少しだけ経験を共有した気になってみる。

そういうことが、自分以外の人を理解するということなんだと思う。

わからないものはわからない。それでも、わかろうと努める。わかってもらえなくても、努めてくれていることに感謝する。わかろうと努力することのもどかしさを、想像して共感する。

もう、ややこしいな。ややこしいが、そんなもんだろう。だいたい人間の感情なんてややこしい。

こういう考え方が常に出来ているのかと言われたら、そうでもないんだけどね。ちょっとイライラしちゃうこともあるし。なんだけど、気をつけてはいるんだよ。とにかく、相手のことを想像しまくる。想像しても、所詮は想像なんだけど、それでも頑張って想像してみる。そして、対話の中ですり合わせる。といのは、ぼくにとって長い間日常だったから。

営業職って、本来はそういうもんじゃないかな。ぼくにとっての営業職というのは、相手のことを本気で想像して、本気で寄り添うことが出来る人のことだ。あくまでも、ぼくにとっての、だけどね。売り場に立って接客販売をするなんてことは、これだけでいいくらい。自分が持っている知識がお客様の役に立つためには、このワンパターンで十分かなあ。

どうでもいいんだけど、この能力が高いとモテるんだよね。体験したことがなくてもある程度想像できちゃうから。そうすると、共感力が自然と高いように見えるんだよ。なんなら、先回りしてフォローすることも可能になる。と、どうなるか。「この人、私のことをわかってくれる!」ってことになる。

あんまり褒められたもんじゃないけどね。それに、諸刃の剣だし。異性とお付き合いすると、一緒にいる時間が長くなるよね。結婚したらもっと増える。つまり、常に相手のことを想像しまくるモードでいなくちゃいけなくなるんだよ。まぁ、そんなに苦ではないのかもしれないけど。ずっとその調子でいると、お互いにちょっとしたズレが気になりだすんだ。前はもっとわかってくれていたのに、最近はわかってくれない。心が離れているからかな。という、良からぬ方向へ進むことになる。恋愛で活用する人は、程々にね。

想像する。これは、ぼくにとって大事な思考方法だ。たべものラジオの何割かは、ぼくの妄想グセで出来ているのだ。世界史や日本史のように、確立された学問分野でさえ穴が開いているのが普通だ。証拠と証拠を繋ぐモノが発見されていないという穴がね。食べ物のルーツだとか、何が料理に影響したのかだとか、そんなものはハッキリ言って証拠がないのだ。だいたい、資料がメチャクチャ少ないのよ。だから、色んな角度から情報を集めて、一見離れ離れの事実を関連付けていくしかないんだよね。

ほんとに関連があるかどうかはさておき、もしかしたらこれとこれって繋がっているんじゃない?って「想像」するわけ。この人って、たぶんこんな性格だよね。だったら、こういう挙動しても不思議はないよね。というのも含まれる。で、そういう想像を働かせてから、離れた点と点を繋ぐ傍証を探しに行くんだよ。もちろん傍証すら見つからないこともあるけどね。そういう時は、状況をつぶさに観察して、さもありなんという仮説に仕立てていくしか無いんだけどさ。

今日も読んでくれてありがとうございます。現代社会でも、過去でも未来でも、「ホントのところはわからない」のだ。わからないから、お互いに離れた「点」として存在している。この前提に立って、想像力で点と点を繋いでいくんだろうね。まるで星座みたいだ。

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武藤 太郎

1988年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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