接待ってなに?ビジネスに必要なの?その本質を探る。 2024年3月15日

接待というと、あまり良いイメージを持たない人が多いのかもしれない。談合や官官接待などという言葉がメディアを賑わせていた時代があって、接待イコール賄賂というイメージが付いてしまったのだろうか。それとも、とにかく面倒なことで、仕事の話は昼間の間に会議室で行えばよいと考えるのだろうか。調査したわけではないけれど、あまり表向きに出来ないようなイメージがつきまとうという声は聞いたことがある。

飲食を伴う接待には、本質的な意味があるはずだ。というのも、長い年月の間、人類は世界中のあちこちで会食を行ってきたし、そういった場で割と重要な決定がされたり、人的ネットワークを構築したりしてきたことが読み取れるからだ。

権力構造をはっきりさせる。平安時代の貴族であれば、豪華な食事を振る舞うのは権力があることを誇示することにつながる行為だった。どうだスゴイだろう。これだけのものを用意して振る舞えるのは私に力があるからだ。歌会なども同じだろうか。武士の世であれば、忠誠心を示すために将軍家や有力武家に対して食事を供する。私のできる限りのおもてなしを見てください。限界まで頑張りました。そういったアピールだ。

そんなことは、接待ではなくても伝えられると思うかもしれないが、実はそうではない。場をセットすることそのものにも意味があるのだ。

私達は、場の雰囲気に支配されている。雰囲気によって、自分の中の別の部分が現れてくるようなところがある。職場にいるとき。家族といるとき。家族の中でも大人同士の場合と、子どもと接している場合。それから、古くからの友人といるときなどなど。それぞれのシチュエーションで、キャラクターは変わる。全部まぎれもない自分自身なのだけれど、表出するのはその一部である。

場に支配されやすい性質を利用したのが、例えばスーツや制服などに着替えるという行為だろうか。会社で仕事をするのか、自宅で仕事をするのか。それも意識のスイッチングに働きかけるだろう。在宅で仕事をするのがデフォルトの人も、自宅に仕事スペースを設けている人も少なくないと聞くが、そうすることでスイッチを切り替えているのだろう。

こうした側面を利用したのが、オフィスの外で行われるコミュニケーション。通称接待。接待という言葉は、もてなすことを表している。が、それだけが本質ではない。用いる言葉が本質を表していないのは、日本語によくあることだ。「今度、食事に行きませんか」という誘い文句が、「ゆっくりお話しましょうよ」という意味を持っているのと同じことだ。だから、接待という言葉には、「ビジネスモードだけじゃない部分でもコミュニケーションしましょうよ」という意味が含まれているのではないかと思うのだ。

武家政治の時代であれば、「伝統的な形式の中で忠誠を誓う」ことはある。いわゆる儀式。それも重要だけれど、あなたの中の別人格とも深くつながりたい、という意識があって食事という「場」をセットしていたように見える。鎌倉時代の頃は特にその様相が強そうだ。ただ、時代が下がるにつれて形式化していくようだが。

人格をスイッチングすると言っても、はっきりと別人格になるわけじゃない。別の側面が見えるようになるというだけのこと。だから、茶室の中ではフラットな関係であることが前提と言っても、そこにはしっかり主従関係が持ち込まれる。普段見せない別の部分が見えやすい環境で、コミュニケーションをとるというのは、深い関係性を築こうとする意識の現れなのだ。そして、それを理解している人の間では、接待は実に有効に機能する。

誤解を招く表現になるが、「接待なんて意味がない」と信じている人は、接待の表面的な解釈しかしていないとすら思える。実際に、接待の場でもビジネスモードのまま全く変化しない人もいる。それはそれで良いのだろうけれど、場を変えることの利点が損なわれているような気がしてならない。

今日も読んでくれてありがとうございます。そもそも共食という行為が、仲間意識を作るからね。仲間だからこそ共食をしてきたわけだから。まぁ、あんまり行動の意味ばかりを考えていても窮屈だから、「この人ともっと話をしてみたい」「もっと仲良くなりたい」くらいの気持ちで場をセットするのが良いんじゃないかな。

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