今日のエッセイ-たろう

方言は言葉のデザインだ。って、誰か偉い人が言ってたな。 2025年6月4日

日本語って面白い。国語の教科書で教えられることは、日本中同じ基準なのだろうけど、イントネーションやアクセント、省略の仕方、音のつまり方なんかは、各地でバラバラ。100年くらいかけて標準語に統一させようとしてきたのに、まだちゃんと残ってるのが方言。さすがに100年もやっていると、少しばかり平準化方向へ進んでしまったみたいだけど、それでもやっぱり「お国言葉」は出るもんね。

ぼくも東京で働きはじめた頃は、なるべく方言がでないように気をつけてたな。別にいじめられるわけじゃないし、せいぜい飲み会のネタにされるくらいのものだけど。なんとなく、方言で喋るのは田舎臭くてカッコ悪いという気がしていた。だけど、それも不思議なんだよね。なんでそれがカッコ悪いと思っていたんだろうな。どこかでそんな教育を受けたんだったかしら。

たべものラジオを始める前にお試しで収録した音源があって、ポッドキャストでは「第0回」として上がっているのかな。地元の知り合いのおばちゃんに、「面白かったけど、あんたら方言丸出しじゃん」って言われたことがある。方言丸出しが良くないって直接的に言われたわけじゃないんだけど、そんな雰囲気はあった。そういう、よくわからない空気みたいなものがそこら中にあるんだろうな。

英語が苦手な言語文化をもつ日本人は、英語圏に行くとうまく喋れないという人がいる。語学力が不足していて喋れないというのではなくて、頑張って喋ってみても聞き取ってもらえないのが辛いというパターンがすごく多いらしい。これは文化の違いだからしょうがないのだけど、アメリカなんかだと聞き返すときに「ハンっ!?」って強く言うことがあるのね。フランクな場で、わざわざ「エクスキューズミー」とか言わない。日本語だったら「え?」って軽く聞き返す感じだと思うんだけど、ぼくらには強く感じるよね。で、こちらの発音が悪いせいだと思い込む。いや、実際のところ悪いと思うんだ。だいたいね。日本語だったら「あ」に集約されるはずの音が5種類もあるんだから、そう簡単に発音できるわけ無いんだよ。留学したとき、母音の練習をやらされたもんなぁ。

で、ある時気がついたの。外国人には外国人としての英語の甘さっていうのがあるんだって。ぼくよりもずっと日本語なまりの強い英語なんだけど、圧倒的に英語力が高くてガンガン高速で会話している先輩がいたんだ。スペイン語なまりのメキシコ人とか、韓国語なまりにフランス語なまり、アラブなまり。たまたまぼくが通ったクラスが国籍のるつぼだったから、みんななまっているの。で、上級生も社会人もそれで良いやってなってる。ディベートのときなんかは、発音のことなんか考えないでドンドン喋らないと議論にならないからね。

日本に標準語というものが作られたのは、そもそも会話を成立させるためだったと聞いたことがある。明治政府の要人が集まって会議をするんだけど、何を言っているのかわからない。通訳が必要だったとか。で、みんながわかる共通言語が必要だってことで作られたんだって。

だったら、伝わるのなら方言で話しても言いってことよね。日本語なまりの英語がオッケーなんだから、地方のイントネーションでも良い。そういうことだと思ってから、ちょっとコミュニケーションが楽になった記憶がある。

関西支店に転勤になったときは、頑張ってイントネーションを覚えようとしてた。もちろん、ネイティブじゃないからエセ関西弁なんだけど、現地の人たちとコミュニケーション取りながら、いろいろと教えてもらったんだ。ほら、観光旅行で日本に来た外国人が、ちょっとでも日本語を喋ろうとしてくれると嬉しいでしょう。

今日も読んでいただきありがとうございます。「正しい」出汁のとり方という表現が嫌いなんだよね。色んなところで書いたり言ったりしているんだけど。それって、食の地方色を否定する観念に繋がりそうな感じがするんだよね。地域や家庭によっていろんな出汁のとり方があって、それぞれに面白いと思うんだ。どれか一つが正しいってことになると、それ以外は間違いってことになっちゃいそうで。その気がなくても、時間とともに固着することって、よくあるからさ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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