今日のエッセイ-たろう

英会話のスピードを上げるためにやったこと。 2023年2月7日

昨日の続きです。

英語での会話のスピード。とりわけレスポンスを早くするにはどうしたら良いか。英語そのものの勉強よりも、そんなところに意識を振り向けたのだから本末転倒だ。もっと本を読んだり、文章を書いたりして地道な努力をすればよいのに。それをやっていたら、いまでもちゃんと英語が喋れたかもしれないのにな。

まず最初にやったのは、テレビを見ること。ニュースはもちろん、バラエティ番組やホームコメディ、ドラマなど、とにかく片っ端から見た。当時の日本ではあまり見かけないテレビのサービスに、キャプション機能がある。主に耳の聞こえない人のために字幕表示を行う機能だ。20世紀の終わり頃には、アメリカで販売されているテレビのほとんどがその機能を搭載していたし、機能のついていない機種でも外付けのオプションが販売されていた。今では当たり前のサービスだが、まだブラウン管テレビの頃の話である。こういう福祉機能は進んでいるなあと感じたものだ。

ひたすらテレビを見る。この効果は意外とある。知らない単語のラッシュだから、片時も辞書を手放せない。使用する辞書はその時の気分で2つを使い分けていた。1冊は英和辞典。もう一冊は英英辞典。当然だけれど、後者の場合は単語を調べてもその解説は英語である。ドMなハードモード。というのも、英語スクールの先生に推奨されていたことがあって、挑戦していたのだ。テレビに追いつくために、辞書を引くスピードはアホみたいに早くなったな。

あと、テレビでは「定型文の返答」がインストールされやすい。意味なんかわからなくても、このシチュエーションの場合は、このキャラクターはこう返す、みたいなことは覚えやすい。特にホームコメディは顕著だ。ドラマやバラエティ番組は、動きや表情でもなんとなくニュアンスが伝わってくるのも良い。耳で理解できない情報は目で補強する。簡単な単語しか使っていないのにも関わらず、日本人が思っているよりもたくさんの複雑な意図を表現していることがある。ということを知った。言い方一つで、いろんな表現に使える。というのは、日本語でも同じだ。

ただ、ニュース番組はなかなか大変。ドラマやバラエティ番組に比べると、間違いなく聞きやすい音声であることは間違いない。アメリカ英語にも標準語というようなものがあるのか知らないが、少なくともアナウンサーが喋る英語はきれいで聞きやすいものに統一されているのだろう。

であるにも関わらず、ぼくの知っているような単語力では到底カバーできない量の単語が使われる。経済の話、政治の話、天気の話。案外、こんなことでもぼくには専門用語に聞こえるのだ。軍事関連のニュースなどは完全にお手上げだ。ちなみに、スター・ウォーズを初めて字幕なしで英語で見たときには、混乱した。なにしろ、軍事用語であるうえに映画の中だけの専門用語がたくさんあるのだ。それまで、日本語で一度もスター・ウォーズを見たことがなかったので、意味がわからなかった。

学問ではないけれど、とにかく日常のヒアリングとスピーキングを強化することだけに特化した訓練をしていたのだ。速いだけではダメで、ちゃんと伝わらないといけないから、当時の彼女や友人に発音の指導もしてもらった。豚肉と公園、歩くと働くという、日本人が最も苦手なRとLの発音が言い分けられるようになると、ずいぶん伝わり方も良くなってくる。

ここまでやって、なんとかスピードは上がってきたのだが、それでも自然ではない。そこにもどかしさを感じるようになってくる。というのも、言葉を返すときに間延びする。ぼくが言葉を受け取る。考えて発話する。この工程で、時間がかかってしまうのである。

脳内の工程を具体的に分解すると。英語で聞いて日本語に翻訳する。日本語で考える。日本語で文章を作る。英語に翻訳する。英語で話す。というステップが行われている。これを簡略化するためには、英語で聞いて、英語で考えて、英語で話す、という英語脳に切り替えることだ。と、これについては英語を指導する人たちからも聞いたことがある。ただし、これはメチャクチャ難しいのだ。訓練が必要。少なくともぼくにとっては。

で、なにをしたか。1日10分間は、内言を使わないことにした。内言というのは、脳内で喋る独り言。大抵のひとは、これを使って思考しているはずだ。これを消す。日本語が浮かんできたら、その場で空中に手を伸ばして空を掴んで飲み込む。緊張したときに、手のひらに人という字を書いて飲み込むというのがあるけれど、似たようなものだ。とにかく、肉体的動作で思い浮かんだ日本語を全部飲み込んでしまう。おなかが減ったのなら、お腹が減ったという感覚だけを残して何も思考しない。次の行動を思考するときに思い浮かべるのは、アパートのカフェの映像やマクドナルドのバーガーなど。とにかく映像で思考するしか無いのだ。言葉が使えない以上は仕方がない。

やってみるとわかるのだけれど、10分という時間はおそろしく長い。しかし、これは予想以上に効果があった。イメージを並べていって、それを英語にするのである。早い。聞いたそばから映像化していけば良い。そのうちに、英語で考えることができるようになる。弱点は、日本語がびっくりするほどに下手になるのだが。

今日も読んでくれてありがとうございます。せっかく手に入れた手法だけれど、今はもう殆ど使えない。英語で聞いて英語で考えるというのは、やり続けないと忘れてしまうものらしく、今はそんな機会がほとんどないからだ。たまに、外国に行って何日か過ごすと感覚を取り戻し始めるのだけれど、その頃には帰国というパターンである。あと、現在は内言を駆使していることも大きい。真逆の思考方法が、たべものラジオの基本だから。ただ、ものごとを深く理解したいときには、時々言葉を消してイメージの世界に浸かることもあるから、無駄じゃないかもなあ。ぼくはもう使えなくなった方法だし、思い出を語るくらいしかできないのだけど、興味があったらやってみると良いです。あぁ、英語を勉強し直さなくちゃなあ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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