今日のエッセイ-たろう

「この指と〜まれっ!」 —場が育つと、主役はいなくなる

2026年7月26日は、ポッドキャスト「たべものラジオ」のオフ会があった。自分の番組でありながら、どこかぼくも参加者のような感覚があって、それがなんとも心地よく感じられた。

年に一度程度の頻度でオフ会を開催していると、もう何度も参加している方もいる。
常連の方は、もう既に友達感覚で「ひさしぶり〜」となる。参加者同士がそんな感じだ。同窓会みたいで楽しい。
こういう雰囲気になると、新規は入りづらくなりそうなものだけれど、それもない。はじめましての方も、30分とかからないうちにスッカリ仲間の一人。

ぼくらがそういう環境を作ろうとして工夫しているわけじゃないのが面白い。参加者がみんなでそういう場を作り出している。
そして、いつの間にか、ぼくらも「場の一員」としてその場にいるだけなのだ。ぼくらのやることは、「公開収録の企画を準備する」「みんなの食事と、物理的な場所を用意する」くらいのことである。懇親会になれば、ぼくがふっと姿を消しても気が付かない。

この指と〜まれっ!

もちろん、「たべものラジオ」というポッドキャストがなければ、このコミュニティは存在しない。参加者は、同じ番組のリスナーであることが唯一の共通点なのだ。

ただ「この指と〜まれっ!」と、最初に指を出しただけのことである。少なくともぼくはその感覚が強い。

子どもの頃、「この指と〜まれっ!」と言うと、みんなが集まってきた。そのうち最初に指を出した人なんて、誰も気にしなくなる。
たべものラジオも、そんな感じなのかもしれない。

誰のために集まるかではなく、「楽しみを共有できる人の集まり」に参加する。なんだか、大人のためのサークルみたいで楽しいじゃないか。

大人のサークル

たべものラジオのオフ会で恒例になったのが「お土産」である。これは、ぼくらに対するお土産ではないし、もちろん必須でもない。ただ、「みんなでシェアしたい」という自然な気持ちで始まった流れ。

「こんな面白いもの見つけた」とか「1人ではなかなか食べないけど、みんなと一緒なら」とか。もっとシンプルに「みんなと分かち合いたい」という気持ちが強い。
誰かに評価されたいわけでもなく、みんなで楽しみたい。ただそれあけなのだ。

持ち寄ったお土産を囲んで、「これとこれ、相性がいいよ。試してみて。」と勧めあったりしている。あれこれと「食を楽しむ」光景を見ていると、こういう形での「食との関わり方」があっても良いよね、と思える。
ね。楽しそうでしょう。

今回、特に印象的だったのは自己紹介。なんとなく、「自己紹介しながらお土産の紹介してもらったら良いかも」という流れになったので、ぼくが進行をすることに。と言っても、ぼくは「最初にいく人!」、「次にいく人!」と促すだけ。1人も指名すること無く、次から次へと流れるように手が上がった。それぞれが、直前に紹介した人の話に関連しそうなタイミングで出てくる。

こうして文字にすると、現場を見ていない人は「それは、私には無理かもなぁ」と思うかもしれない。だけど、ここに積極性なんていらなかったんだと思う。ぼくの文章力では表現しきれないけれど、たぶんそうなんだ。だって、誰も緊張していなかったもの。

日常の外にあるコミュニティ

ちょっとだけ真面目な話をすると、この空間にはヒエラルキーが無いのが良いのだと思う。会社にいると、上司や部下がいて、取引先もいればスキルの差が人間関係を構築する。それは決して悪いことではなくて、チームがうまくワークするためには一定のヒエラルキーはあったほうが良いと思っている。

だけど、それが膠着すると少しばかりストレスになるかもしれない。そういう意味で、ぼくらは日常とは別のコミュニティがあったほうが良いと思うんだ。

会社では社長と平社員という間柄だけど、釣り好きのコミュニティの中では平社員のほうが師匠になる。というのは、「釣りバカ日誌」という漫画の設定だ。
社会というのは、誰もが「提供する側」にも「受け取る側」にもなるはず。それを頻繁に入れ替えながら、互いのことを感じ合っている。時には「何の役割もない」状態で、趣味嗜好が共通する人と一緒に過ごす。

いろんな「場」があって、だからこそぼくらは一定の寛容さを発揮できるかもしれない。と、そんなことを空想しているのである。

今日も読んでいただきありがとうございます。

参加してくれた人は、来てくれて本当にありがとうございました。オンラインの向こう側でコメントしてくれた人もありがとうございます。めちゃくちゃ元気が出ました。今回は参加できなかった人も、こういう集まりに興味がない人も、みんなありがとうございます。

そのうち、また企画します。
そのときも、みんなで「この指とまれ」をして遊べたら良いな。

タグ

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

-今日のエッセイ-たろう
-,