今日のエッセイ-たろう

「勉強」を分解して「動詞」に置き換える。2022年9月25日

たべものラジオはぼくの個人的な勉強量にかかっている。と言っても過言ではない。ホントは、もっと色んな人と意見を交わしていけば、もっと面白くなるのだろうけれどね。まぁ、時間や物理的な制約もあって、今のところは実現しそうにもない。

書籍やwebサイトの筆者と対話をしながら進めている感じかな。疑い深いというか、なるべく鵜呑みにしないように気をつけている。というのもあるのだけれど、複数の資料にあたると、話の辻褄が合わないということもよくあるのだ。

辻褄が合わないのは、諸説がある場合もあるし、筆者の調査不足もあるし、ぼくの理解力が及ばないこともある。よくよく調べてみたら、一見辻褄が合わないように見えた2つの意見が合致していたということもあるんだよね。時間軸がズレているとか、視点が違うとか、ぼくの中の情報が欠損していてそれぞれを繋ぐ点が見えていなかったとか。原因はいろいろ。

音声番組として情報を配信している。そのための準備として勉強をするわけだ。これをもう少し分解して考えてみよう。勉強という言葉は名詞だし、勉強+するで動詞になるのだけれど、なんとなくぼんやりしている。もっと細かい動詞に分けたほうが、一体何をやっているのかがわかるような気がしたんだよね。こんなことを知りたい人は少ないかもしれないけれど、自分が普段何をやっているのかを自分で理解出来ていないと思っていて。何度となく言語化を試みているんだけど、まだ整理できていない感覚がある。

勉強の最初は、まずテーマを決める。決めるというのは、もう直感でしか無い。直感なのだけれど、それなりに基礎知識が必要なのかもしれないなあ。このテーマを掘り下げたら、このあたりを通過してこのあたりに着地する。そんなことを「想像する」のだ。

それから、周囲の人達に「聞く」ことかな。どんなことに面白さを感じるのか、もともと知っている情報をある程度話してみて、もっと知りたいと言われるようなことをテーマにする。

テーマが決まったら、「調べる」に移る。調べるためには、その情報が必要になる。情報源は主に書籍だけれど、それ以外にも論文やwebページも読む。どの情報ソースにあたればよいか「探す」という行為になるのかな。これがなかなか面倒な作業なんだよね。基本的に図書館は使用していない。ホントは市営の図書館を利用したいところなんだけど、図書館の営業時間は店にいる。都合の悪いことに休館日は店の定休日なのだ。だから、webで検索する。

検索するのにも、キーワードをどうするのかは勘なんだよなあ。例えば豆腐を調べるにしても、豆腐というキーワードだけで検索すると情報が狭いんだよね。精進料理とか禅宗とかもキーワードになりうるし、大豆や豆乳もそうだし、代替肉や肉食禁忌や中国史もキーワードになりうる。こういうところに最低限の基礎知識が必要になるんだろうなあ。そんなだから、調べ始めてから、原稿を書き始めてから追加で資料を収集するということもたくさんあるんだ。ある程度の知識がないと、その情報に届かない。情報がないと疑問すら思いつかないってこともある。

スシのシリーズで、なれ寿司を調べていたら鮎ずしが登場するんだよね。中部地方では鮎と言えば長良川。だから岐阜あたりで鮎のなれ寿司が名物になるのはわかるんだけど、尾州の鮎ずしが江戸時代に名物だったというのはわからない。そんなところで鮎が捕れたんだっけ?と言う疑問。地理感覚が無いと無理かもなあ。しょうがないから、当時の藩の事情とか領地とか藩と藩の外交貿易について調べるわけだ。で、結果的に遠隔地に領地があることや、鮎ずしの生産から輸送に関する流れにたどり着く。

とまあ、こんなことを繰り返していくわけなんだけどさ。改めて言語化すると、「調べる」と「探す」だけでもかなり面倒なことをやっているんだなあということがよく分かる。原稿を書くことより、台本を書くことより、この時間が最も長そうだ。

いま、次のシリーズの原稿に取り掛かっているところなんだけど、結構あせっていたんだ。何冊か本を読んだけれど、まだ一文字も原稿を書いていないという状態が不安でさ。初期の頃は、原稿を書きながら調べ物をしたりしてドンドン進んでいたからね。その記憶に引っ張られてあせる。なんだけど、こうやって言語化してみると、「調べる」「探す」という工程に時間がかかるのは当然のような気がしてきた。もしかしたら、作業時間の大半はここに使っているのかもしれない。だったら、そんなにあせることはない。

ここから、「考える」「妄想する」の時間が長らく続く。もうね。これは書いている間もそうだし、オフロに入っている時も、仕込みをしている時も続く。ひたすらに「妄想する」かな。当時の人やモノがどんなふうに動いていたのか、どんなカタチだったのか、どんな感情で見ていたのか。頭の中で映像化したり、語ってみたりする。微に入り細に入り。無理なところは省くけど、肝心なところで映像が結べないときがあるんだよね。ピントが合っていないとか、急に話がぶっ飛ぶとか。これが映画だったら、気持ち悪いだろうなあ。そんなところを見つけ出して、また情報を「探す」のだね。

この段階になってきたら「書く」ことをしている。妄想をずっと頭の中で覚えているのは難しいからね。それに長いから。初期の頃のことなんか忘れちゃう。あ、むしろ忘れるために書いているのかもしれない。文字に書き起こしてしまえば、ある程度は忘れても良い。というくらいにして、脳内のメモリーを開けないとね。メモリー不足で思考が止まっちゃう。かと言って、全部忘れちゃうと思考が積み上がらない。伏線回収ができなくなっちゃう。

で、結局は自分で書いた原稿を読み直すハメになる。読み直しているうちに、修正点が見つかったり情報の欠損が見つかったり、いわゆるツッコミどころが見えてきて。また調べ直しと。もうキリがないよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。なんだかさぁ。これ言語化しないほうが良かったかもしれない。書いてみたらすっごいタイヘンなことをやっているように見えちゃうんだよ。錯覚なんだけど。モチベーションが下がるということではないけれど、「うわっ、しんどそう」という尻込みみたいな感情が湧いてきちゃう。知らなくても良いこともあるんだなあ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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