今日のエッセイ-たろう

「SKS Japan 2023」の感想。まずは、ただの感想です。 2023年8月3日

「SKS Japan 2023」から少し時間がたった。本当なら、このエッセイもその話題が中心になるはずだし、そうであるべきなんだろうけれど、なかなか筆が進まない。それは、まだ僕の中で発酵が終わっていないからだ。

どうも、ぼくは一度インプットした情報はしばらく熟成しなくちゃいけないらしい。暫くの間、放っておくと知らないうちに発酵が進んでいく。誰かと会話をしているときだったり、本を読んでいるときだったりして、何かしらの刺激が加わったときに発酵が進んでいく感覚がある。だから、今の時点では、ぼくのぬか床はまだ日が浅い。時々手を突っ込んでかき混ぜてやる。そういうタイミングってことでいいよね。とヌカボットがあったら聞いてみたい。

SKSというのは、日本最大のフードテックカンファレンスである。で、その本質は実に人間臭いように思う。テックと言う割に、情緒的なのだ。食産業というふわっとした世界の中で、いろんな事業があって、それぞれに色んな思いを持っている人がいる。パーパス経営という言葉があるけれど、事業の前には必ず思いがあって、それぞれの人にとっての未来想像図がある。それを、伝え合う場なのではないだろうか。

相互に似ていることをしていても、見ている未来が違うこともある。逆に、全く違うアプローチなのだけれど、描きたい未来が共通していることもある。そのどちらも面白くて、お互いに手を取り合ってもいいし、そうじゃなくてもいい。

もちろん、一緒にタッグを組んで事業を前に進められたら素晴らしい。一方で、協業しなくても、そういう人がいるという事実を知っておくだけでも価値があると思うんだ。空想の話だけれど、ぼくらに協業の話が来たとして、ぼくらじゃなくてもっと良いパートナーになりそうな人を知っていたとする。ぼくらが力になれ部分では全力でやらせてもらうけれど、そうでなかったら紹介することが出来る。そんな感じの繋がりって、あったほうが良いと思うんだ。自社の利益だけじゃなくて、業界全体の利益や社会全体ということを視野に入れたら、その方が良いこともあるじゃない。

個人的に好きなエピソードがあって、まだ本編では取り上げていないのだけど、明太子のふくやの創業者川原俊夫氏が魅力的なのだ。明太子というものがなんとか軌道に乗って人気商品になってくると、周囲からは「特許を取るべきだ」と言われた。これに対して川原氏は「明太子はただの惣菜。真似したい人がいたら作り方を教えちゃる」と言って、味付け以外の製法は全て公開した。その結果何が起きたか。明太子は「博多」名物になったのだ。ふくや名物ではなく、博多名物。この方はずっと「中洲のために」と一途に思い続けてきた人なのだ。明太子はその思いが表出したひとつにすぎない。

なかなか出来ることではない。頭では理解できても、それを行動に移すのは並大抵の信念ではないと思う。このエピソードがふと頭をよぎったのが、SKSの会場でのことだった。自分たちが得意なことと、他の人が得意なことを組み合わせる。志が重なるところで、お互いに手を取り合って50年後の未来を描く。とはっきり言ったのは、カフェ・カンパニーの楠本社長や味の素の藤江社長だった。50年ですら短いが、とりあえずはそこに焦点を合わせて、一緒に未来を描こうじゃないか。SKSJapanというカンファレンスが発したメッセージは、これに集約されるように感じる。

今日も読んでくれてありがとうございます。たべものラジオはメディアパートナーとして名前を並べていただいたのだけれど、ぼくらが出来ることはなんだろうか。今一度、50年後の未来を妄想して、そこからバックキャストしてみよう。こうありたい、という未来にむけて今すべきことを進んでいく。整理し直さなくちゃ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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