今日のエッセイ-たろう

カラオケと料理と遊びのはなし。 2023年11月10日

日本人ってカラオケ好きだよね。というか、多分、歌唱力の平均値が高いんじゃないかと思うんだ。あまり海外の人と一緒に歌を歌う機会はないのだけれど、たまたまカラオケに行くことがあった。有名なバンドの歌を熱唱するのだけれど、どうにもしっくりこない。というか、音が取れていない。日本人でもそういうことはあるけれど、それでもそれなりに形になるのだ。

聞いてみると、民謡や唱歌を歌うことはあっても、歌謡曲を歌う機会は少ないらしい。近年になって、日本発祥のカラオケというものがやってきたけれど、日本人ほどには歌わないらしい。彼らの言葉と、ぼくの実体験だけだからどこまで正しいのかわからないけれど、そういう感覚もあるらしい。

そういえば、「歌がうまいマウント」みたいな空気がある気がする。ぼくが若い頃の話ではなくて、もっと最近の話。僕らの時代は、上手い人は憧れられるだけで、下手だからといって歌うのが恥ずかしいなんてことはなかった。だいたい、学生の頃に一緒にカラオケに行っていた仲間の中には、バンドでボーカルやっている友達が何人か混ざっていて、それとは別に歌が好きで上手な人もいた。ぼくなんかは、いつも頑張れ頑張れって応援されるくらいのものだった。けど、それはそれで楽しかった。

カラオケなんてものは、しょせん遊びだ。遊びだからこそ真剣になって、上達しようって気持ちにもなる。プロの歌手ではないから、歌がうまくなっても報酬が生まれるなんてことはないけれど、それはそれで楽しいのだ。

技術があれば、それなりの遊びが出来て、遊びの幅が広がる。技術がなくても、それをやること自体に楽しみがあるし、それなりに楽しい。っていうのが、遊びってものだろう。

料理が苦手という人の中に、料理そのものが下手だとか、センスがないとか面倒だっていう人がいる。どうも、カラオケ文化と重なるような気がしているのだ。たかが、遊びであるにも関わらず、どこかで「上手でなければならない」という脅迫概念めいたものがあるのかもしれない。

上手であるかどうか。カラオケで、これを基準にしたときには、聞いてくれる人が必要になる。上手であるかどうかを判定して褒めてくれる人が必要なのだ。これに対して、歌が上手かどうかに関わらず、シンプルに歌が好きだという人は一人でも楽しめる。ただただ、歌が好きなのだからそれで良い。遊びなんだからそれでいい。

誰かのために料理を作るのは出来るけれど、自分のために料理をするのを回避しがちな人がいる。ぼくもそういうところが無いわけじゃないけれど、それは「誰かのため」のほうがより強くやる気になるというだけのこと。一人暮らしのときなんかは、割とマメに料理をしていたし、休みの日はある程度ストックを作っていて、それも楽しい作業だった。

そもそも、美味しく出来ても、そうでなくても、食べるのは自分なんだ。別に誰かに「料理が下手だ」って言われることもない。その分褒めてもらえることもないのだけれど。もう、ぼくみたいに料理を仕事にしてしまっていると、プライベートで褒めてもらいたいとも思わないんだけどね。こういったら叱られるかもしれないけれど、妻よりも料理が上手なのは当たり前なんだよ。そういう仕事をしているんだもの。褒められても褒められなくてもどっちでも良い。

歌が上手いかどうか。料理が上手かどうか。だけで「評価」するのは健康に良くない気がするんだよね。楽しいかどうかっていうだけで構わないんだと思う。色々やってみて、上手になったほうが楽しそうだなって思うようになったら、挑戦してみたら良いと思うんだ。別に、全員が料理上手にならなきゃいけないなんてことはないのよ。

今日も読んでくれてありがとうございます。料理というのは、ちゃんと向き合えばビジネススキルの向上にとても有効だ。クリエイティビティを育てる機会にもなるし、効率を考える訓練にもなる。気持ちの持ちようによっては、気分が晴れ晴れとして心身の健康にも寄与する。なんだけど、そんなことを考える前に、好きな人は好きなようにやってみるというところから始めるのが良いんじゃないかな。鼻歌を歌って気持ちいいっていうくらいの気軽さでね。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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