今日のエッセイ-たろう

リポジショニングとかピボットとか 2022年10月27日

仕事をし始めて、何年も同じことをやっているとそれなりに安定してくる。スキルも蓄積されるし、経験も貯まる。それなりに社会の中で求められていれば、収入だってそこそこ安定する。その地に安住することは、比較的自然なことだろう。

一方で、同じ場所にとどまることが苦手な人もいる。当事者は得意とか苦手とか思っていないのだろうけれど、外側から見たらやたらと変化し続けているのだ。せっかく仕事がうまく行っているのに、さっさと会社を辞めて他の仕事に付く人っているじゃない。周りから見たらもったいないと言われるようなタイミングで。それから、環境を変えるばかりじゃなくて、仕事を変化させてしまう人もいる。同じことを続けるのが苦手なのか。それとも、新しいことに移りやすいのか。どういう心境なのだろう。

このまえ、そんなことを話していたら、ぼくらも変化が大きい部類に入るらしい。全く自覚がないからわからないのだけど。社会の中でポジションを変化させる動きのことを、リポジショニングというらしいということを聞いた。それまでの仕事と関連しているのだけど、同じじゃない仕事とそのエリアで活動するように転身することを言うらしいんだ。たしかに、たべものラジオをやり始めた時点で、それまでの飲食店とは少し違った動きにはなったかな。

他の大きな会社の事例を見ても、長く残っている会社の中にはメインの仕事を大きく変えてきたというところも少なくない。大学生協みたいな会社だったのに、いつの間にか化粧品や健康食品の会社になっているとか。カメラフィルムの会社だったのに、化学や薬品の世界で活躍している会社だとか。馬具を作っていた会社は、いまや世界的な鞄メーカーになっているだとか。

事業の平均寿命が18年くらいだっていう話もあって、会社が残るためには事業内容を変化させていかなくちゃいけないんだろうな。切り替える場合もあるだろうし、増やすという場合もあるだろうし。

会社経営の場合だと、ピボットと表現することが多い。バスケットボールをやったことがある人ならピンとくるかな。軸足を固定したまま、反対の足だけ動かして方向転換するっていう、あれ。それまでに培ってきた強みを別方面に向けて活かすっていう感覚なのかな。例えば、飲食店がテイクアウトを始めるとか、加工食品の販売を始めるとか、そういうこと。あとは、料理教室やフードコンサルタントみたいな変化もあるかな。中には、農村ゲストハウスみたいにしてしまって、泊まれるレストランにしちゃうってこともある。いずれにしても、料理技術をベースにして形態変化を起こしているってことだね。社会環境に合わせて変化するのは、生き物の進化と似ているな。

そういう意味では、たべものラジオもピボットといえるのかな。良くわからないけれど、少なくとも食に関することではある。食のルーツを辿るっていうのは、あんまり飲食店で表現されている気がしないのだけれどね。まぁ、毎日毎日食に携わっていれば、少しくらいは食のルーツにも詳しくなるってもので、それをベースにしているというのはあるのかもしれない。

さて、個人はどうだろう。ぼくらは小さいなりに会社をやっているから経営目線でモノゴトを考える癖があるんだけど。務め人の場合は、どんなピボットを考えたら良いのだろうね。営業職を長く続けていた人が、別の業界の営業職に就いたところで、それはピボットとは言えないんじゃないかな。リポジショニングとも違う。慣れ親しんだやり方を続けるだけだったら、下手をすると足かせにもなりかねないしね。ほら、今までのやり方に縛られるとか。

営業職だったら、企画や調整が得意という人もいるかもしれない。とにかく人前で話すのがウマイという人もいるかもしれない。資料を作らせたらメチャクチャ良いっていう人もいるかもしれない。どちらかというと、そっちのスキルを保有したまま他のジャンルに移行するのが良いのじゃないかと思うんだよね。営業職が別の企業の経理になったらどうなるんだろうか。全く想像がつかないけれど、逆に両方出来る人も珍しいかもしれないよね。横断することが出来たら、それはそれで特殊能力になるかも。

今日も読んでくれてありがとうございます。最近の個人的なトレンドは、横断。ひとつのジャンルを極めた人はいるけれど、複数の職能をこなせる人はまだまだ少ないんだ。横断したジャンルのそれぞれで一流である必要はないと思うんだけど、それなりに出来るようになれば貴重な人材になる。そういう生き方もひとつの道なんだろうと思う。

タグ

考察 (300) 思考 (226) 食文化 (222) 学び (169) 歴史 (123) コミュニケーション (120) 教養 (105) 豊かさ (97) たべものRadio (53) 食事 (39) 観光 (30) 料理 (24) 経済 (24) フードテック (20) 人にとって必要なもの (17) 経営 (17) 社会 (17) 文化 (16) 環境 (16) 遊び (15) 伝統 (15) 食産業 (13) まちづくり (13) 思想 (12) 日本文化 (12) コミュニティ (11) 美意識 (10) デザイン (10) ビジネス (10) たべものラジオ (10) エコシステム (9) 言葉 (9) 循環 (8) 価値観 (8) 仕組み (8) ガストロノミー (8) 視点 (8) マーケティング (8) 日本料理 (8) 組織 (8) 日本らしさ (7) 飲食店 (7) 仕事 (7) 妄想 (7) 構造 (7) 社会課題 (7) 社会構造 (7) 営業 (7) 教育 (6) 観察 (6) 持続可能性 (6) 認識 (6) 組織論 (6) 食の未来 (6) イベント (6) 体験 (5) 食料問題 (5) 落語 (5) 伝える (5) 挑戦 (5) 未来 (5) イメージ (5) レシピ (5) スピーチ (5) 働き方 (5) 成長 (5) 多様性 (5) 構造理解 (5) 解釈 (5) 掛川 (5) エンターテイメント (4) 自由 (4) 味覚 (4) 言語 (4) 盛り付け (4) ポッドキャスト (4) 食のパーソナライゼーション (4) 食糧問題 (4) 文化財 (4) 学習 (4) バランス (4) サービス (4) 食料 (4) 土壌 (4) 語り部 (4) 食品産業 (4) 誤読 (4) 世界観 (4) 変化 (4) 技術 (4) イノベーション (4) 伝承と変遷 (4) 食の価値 (4) 表現 (4) フードビジネス (4) 情緒 (4) チームワーク (3) 感情 (3) 作法 (3) おいしさ (3) 研究 (3) 行政 (3) 話し方 (3) 情報 (3) 温暖化 (3) セールス (3) マナー (3) 効率化 (3) トーク (3) (3) 民主化 (3) 会話 (3) 産業革命 (3) 魔改造 (3) 自然 (3) チーム (3) 修行 (3) メディア (3) 民俗学 (3) AI (3) 感覚 (3) 変遷 (3) 慣習 (3) エンタメ (3) ごみ問題 (3) 食品衛生 (3) 変化の時代 (3) 和食 (3) 栄養 (3) 認知 (3) 人文知 (3) プレゼンテーション (3) アート (3) 味噌汁 (3) ルール (3) 代替肉 (3) パーソナライゼーション (3) (3) ハレとケ (3) 健康 (3) テクノロジー (3) 身体性 (3) 外食産業 (3) ビジネスモデル (2) メタ認知 (2) 料亭 (2) 工夫 (2) (2) フレームワーク (2) 婚礼 (2) 誕生前夜 (2) 俯瞰 (2) 夏休み (2) 水資源 (2) 明治維新 (2) (2) 山林 (2) 料理本 (2) 笑い (2) 腸内細菌 (2) 映える (2) 科学 (2) 読書 (2) 共感 (2) 外食 (2) キュレーション (2) 人類学 (2) SKS (2) 創造性 (2) 料理人 (2) 飲食業界 (2) 思い出 (2) 接待 (2) AI (2) 芸術 (2) 茶の湯 (2) 伝え方 (2) 旅行 (2) 道具 (2) 生活 (2) 生活文化 (2) (2) 家庭料理 (2) 衣食住 (2) 生物 (2) 心理 (2) 才能 (2) 農業 (2) 身体知 (2) 伝承 (2) 言語化 (2) 合意形成 (2) 儀礼 (2) (2) ビジネススキル (2) ロングテールニーズ (2) 気候 (2) ガストロノミーツーリズム (2) 地域経済 (2) 食料流通 (2) 食材 (2) 流通 (2) 食品ロス (2) フードロス (2) 事業 (2) 習慣化 (2) 産業構造 (2) アイデンティティ (2) 文化伝承 (2) サスティナブル (2) 食料保存 (2) 社会変化 (2) 思考実験 (2) 五感 (2) SF (2) 報徳 (2) 地域 (2) ガラパゴス化 (2) 郷土 (2) 発想 (2) ビジョン (2) オフ会 (2) 産業 (2) 物価 (2) 常識 (2) 行動 (2) 電気 (2) 日本酒 (1) 補助金 (1) 食のタブー (1) 幸福感 (1) 江戸 (1) 哲学 (1) SDG's (1) SDGs (1) 弁当 (1) パラダイムシフト (1) 季節感 (1) 行事食 (1)
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

-今日のエッセイ-たろう
-, , ,