今日のエッセイ-たろう

当たり前のことが、実は最も大切。 2023年2月18日

わかっているけれど、そんなの当たり前だと思っているけれど、でもやっていない。そんなことが日常に溢れている。たぶん、ぼくだけじゃなくて、ほとんどの人はそうだろうと思う。

例えば、健康でいるための秘訣を考えてみよう。日常生活をどのように過ごせば健康でいられるのかということだけど。答えはとてもシンプルで、よく寝ること、食べすぎないこと、毎日軽く運動すること、飲みすぎないこと、だ。昔からずっと言われてきた。もう、こんなことはほとんどの人が知っている。当たり前とされていることなのだ。けれども、それを実行していない。

小さな子供がいる家庭であれば、子供に対してこんなことを言うかもしれない。「早く寝なさい。明日起きれなくなるよ。」子供には言うのだけれど、自分自身はどうかというと、その後もテレビやスマホを見て無為に時間を過ごしているということもあるのではないだろうか。

「宿題やったの?」というセリフも、日本全国の多くの家庭で聞くことが出来るだろう。遊ぶ前にやってしまいなさい。ギリギリになってからやっても、身につかないことが多いということを知っているからかも知れない。やるべきことを済ませてから心置きなく遊んだほうが良いということも聞く。いずれももっともらしく聞こえる。宿題ではなくても、学習は復習することが大切だということは知っている。たぶん、大人も自身の経験から言っているのだろう。

ただ、大人は勉強しているかというと、そうでもない。子供には勉強しろと言っておきながら、自分自身は勉強していない。ということが多いだろうと思うのだ。今日の会議で議題に上がったこと、商談で話したことを改めて見返しているだろうか。そして、それに関連する情報などを学んでいるだろうか。

以前、1年ほど訪問販売の仕事をしていたことがある。ブラックな業界でブラックな企業だったので、早々に転職してしまったのだけど。とにかく売上が大事という会社だったので、成績が良ければあっという間に役職につくことが出来る。入社半年ほどで、ぼくは係長になった。たしか、当時の支店での最短記録だったはずだ。

ぼくが優秀だったからじゃない。シンプルに勉強しただけだ。販売している商材のことはもちろんだけれど、それにまつわる情報を集めた。5冊くらいは本を買ってきて勉強した。それから、地域のことを調べたり、農家さんの生活についても調べたな。訪問先の家庭が農家さんが多かったから。営業のテクニックみたいな本も買ったけど、それは好きになれなかった。お手軽心理学みたいだったし、少々怪しかったから。好きにはなれなかったけれど、それなりに勉強にはなった。そういう勉強をちょっとずつやりながら、手が空いたときには上司にお願いして他の営業マンに同行させてもらった。

で、自分なりにノートにまとめていく。ただ、それだけのことだ。それだけのことで、売上は伸びたのである。もちろん、運も大きく作用しているとは思うのだけれど、それなりに必要だと思うことは勉強したのである。

同僚に聞くと、そういうことはしていなかったらしい。お客様にとって有用な情報だろうということも、知らない。伝えるだけでとても喜んでくれるのに。商品が売れなかったとしても、良いことを教えてくれたと喜んでもらえる。それだけでも、なにかは前進していくだろう。

家に帰ると、同僚も父であり母である。子供には勉強しろという。けれど、自分自身が勉強していない。当たり前だけれど、勉強というのは一生つきまとうのだ。そもそも、長い人生で必要な知識がわずか十数年程度で学び終えることが出来るわけがない。もう一生分の食事は食べ終わったから、これから先は食べなくてもいい。そんなことになるわけがない。毎日食事をしなければ、いずれ体が動かなくなってしまうのと同じように、毎日少しずつ勉強していかなければ知能も止まってしまう。

一部の例外を除けば、人間の能力っていうのは大差がないと思っている。背が高い人だって、倍以上ということはない。足が速いという人だって、わずか数秒程度の違いでしかない。スポーツみたいなものは、そのわずかな差が大きな影響を生むだろうけど、ビジネスマンとしての能力差はもっと小さいのだろうと思っている。必要な勉強なり練習なりを、やるかどうか。それだけで、大きな違いを生むのではないだろうか。そして、その事自体はほとんどの人が知っている。知識として知っているだけではなくて、人生の中で何度と無く経験しているだろう。

今日も読んでくれてありがとうございます。昨今、リスキリングとかアンラーニングと言った言葉が聞かれるようになった。もっと前は生涯学習と言われていた。実は、世界で初めて「生涯学習宣言」を行ったのは、地元掛川。子供の頃、この市長はなんて面倒なことを言い出すんだ、と思ったものだ。けれども、おとなになってから真意を知ると、とても大切な概念だということを知ったんだ。今日の話は、ぼくが出来ているということじゃなくて、自分自身へ言い聞かせるつもりで書いた。当たり前のことを当たり前に実行し続けると、それはいつしか当たり前ではなく特別な世界を見せてくれる。忘れないようにしておこう。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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