今日のエッセイ-たろう

田舎によくあるよそ者感が、うまくいくとき、こじれるとき。 2022年7月25日

先週だったかな。どこに行ってもよそ者っぽいという話を書いたのは。その続編を考えてみた。よそ者がいい感じによそ者として生きていくには?というような話だ。

田舎から都会へ、都会から田舎へと人口は流動的に動く。前者のほうが多い印象だったけど、最近はテレワークが増えてきたせいなのか、田舎へと移り住む人も多くなってきたみたいだね。テレビや新聞で見る程度の情報なので、正確な数字は知らないのだけど。

大都会から田舎へと移住するときに、よくある調和不調。よそ者がよそ者としてなかなかうまく溶け込めないでいるコトがある。こじれてしまうと、不和を生み出してしまう。ぼくもギリギリのところで回避できたようなもんだから、よくわかるんだよね。もともと地元の出身なので、こじれるようなことは無かったというのもあるかな。

都会の大企業に勤めていたような人は、溶け込むのに苦労している印象がある。というのは、なんだか偉そうなんだ。ちょっと極端な物言いをしてしまうと、田舎者を下に見ているのじゃないかと思うんだ。全てではないし、程度の違いもあるけど、そういう傾向がありそうだという話。

生き馬の目を抜くような世界で、まるで「戦う」ようにして働いてきた。スピードも、物量も、人の数も圧倒的。だからこそ、その世界でしか経験できないことがある。例えば接客業を比べるとして。田舎だったら一生かけても出会うことのない人数も、都会では数年でやってくる。一定エリアに住まう人数を、商圏として捉えるのだけれど、商圏人数には圧倒的な開きがあるわけだ。これだけが原因ではないけれど、いろんな意味でスケールが大きい。だから、それに見合ったやり方が発達しやすいという側面がある。

これを、上位のスキルだと勘違いする。この勘違いがお互いの理解を損なってしまう。結果として、人間関係がこじれる。この感覚は厳然たる事実だ。少なくとも、ぼく自身がそうだったのだから、最低ひとつは事例が存在する。色んなところで噂を聞くと、ぼくばかりではないことも感じている。

こんな状態から、どのようにして変わっていったのか。とても個人的なことなのだけれど、もしかしたら誰かの参考にはなるかもしれない。

最初に知り合ったのは、商工会議所青年部の人たちだ。長いこと地元を離れていたので、人的なネットワークは無いに等しかった。地元を商圏にして飲食店を経営するのであれば、お客様や取引先などローカルネットワークの構築は必須。そういう、人間味のない感覚で団体に所属した。

そこでは、いろんなしがらみやらこだわりが渦巻いていた。なんとまぁ田舎的で面倒なことだ。もっとうまくやることも出来るのに。と、偉そうな感想を心の何処かに置きながら、それでも友達が出来るかもしれないというワクワクを持っていたのが、入会当初の感覚。

何度か一緒に事業を行ったり、飲みに行ったりしているうちにあることに気がついたのだ。実は、この人マジでスゴイんじゃないかって。この小さい商圏で、これだけの規模の会社と事業を行っていて、会社の利益だけじゃなく社会貢献までやっている。圧倒的な量に支えられたビジネスとは、全く違う領域で生きているのだ。こんなことは、都会では稀だろうとね。

今までとは違う立ち居振る舞いがあるのか。土俵が違うのだ。プレイしているゲーム自体が違う。クリア条件もルールも、コマンドも、何もかもが違う。これは、ぼくが初めてプレイする環境なのかも知れない。

そう思うようになったら、あっという間に溶け込むことが出来た。こちらの態度が変わったのだということに気がついたのは、数年経ってからのことだったな。初めてのゲームに参加するのだから、素人なんだよね。どんなルールでプレイしているのか、どうやって攻略しているのかということが、興味深くて面白い。わからないから教えてもらうし、観察もする。目指すゴールが同じだとしても、違うアプローチをすることだって当たり前のことだ。自然と、「そうなんだ。スゲー、知らなかった。面白い」ということを言いまくっていた。

そうなると、田舎のコミュニティが俄然おもしろくなってくる。見聞きすること全てが新鮮で、興味の対象になるから。そのうちに、周りの人たちも同じスタンスになってくる。同じスタンスの人達が集まってくるのかな。聞かれるし観察される。どちらかが興味を持つようになると、同じように相手に興味を持つようになる。ということになる。すると、都会での活動も自然と聞き出されることになるのだ。

都会。という言葉は、あくまでも例えのひとつ。業界やコミュニティなど、他のものに置き換えても成立すると思うんだ。スゲー。面白い。もっと教えて。クレクレ君になるのもどうかとは思うけれど、本質は底じゃなくてさ。自分の価値観を中心において考えるだけじゃなく、別の価値観にも興味を持つことが肝心なところなんだろう。自分の話は、それに興味を持つ人が現れたときにその人にすればいい。くらいの感覚。

今日も読んでくれてありがとうございます。今思うと、結構恥ずかしい振る舞いだったよなぁ。これ、まちづくりなんかも一緒でさ。こんなことやっても意味ないじゃん。みたいな取り組みでも、意外と経緯を聞いてみるとちゃんと意図があったりするし、苦労して構築していたりする。だからといって、機能していないものをそのまま放置するのも良くないので、意図を汲み取ってバージョンアップするのね。そうすると、大先輩方が反対勢力どころか応援してくれるようになるもんだ。まぁ、個人の経験による学びだけどね。

タグ

考察 (300) 思考 (226) 食文化 (222) 学び (169) 歴史 (123) コミュニケーション (120) 教養 (105) 豊かさ (97) たべものRadio (53) 食事 (39) 観光 (30) 料理 (24) 経済 (24) フードテック (20) 人にとって必要なもの (17) 経営 (17) 社会 (17) 文化 (16) 環境 (16) 遊び (15) 伝統 (15) 食産業 (13) まちづくり (13) 思想 (12) 日本文化 (12) コミュニティ (11) 美意識 (10) デザイン (10) ビジネス (10) たべものラジオ (10) エコシステム (9) 言葉 (9) 循環 (8) 価値観 (8) 仕組み (8) ガストロノミー (8) 視点 (8) マーケティング (8) 日本料理 (8) 組織 (8) 日本らしさ (7) 飲食店 (7) 仕事 (7) 妄想 (7) 構造 (7) 社会課題 (7) 社会構造 (7) 営業 (7) 教育 (6) 観察 (6) 持続可能性 (6) 認識 (6) 組織論 (6) 食の未来 (6) イベント (6) 体験 (5) 食料問題 (5) 落語 (5) 伝える (5) 挑戦 (5) 未来 (5) イメージ (5) レシピ (5) スピーチ (5) 働き方 (5) 成長 (5) 多様性 (5) 構造理解 (5) 解釈 (5) 掛川 (5) エンターテイメント (4) 自由 (4) 味覚 (4) 言語 (4) 盛り付け (4) ポッドキャスト (4) 食のパーソナライゼーション (4) 食糧問題 (4) 文化財 (4) 学習 (4) バランス (4) サービス (4) 食料 (4) 土壌 (4) 語り部 (4) 食品産業 (4) 誤読 (4) 世界観 (4) 変化 (4) 技術 (4) イノベーション (4) 伝承と変遷 (4) 食の価値 (4) 表現 (4) フードビジネス (4) 情緒 (4) チームワーク (3) 感情 (3) 作法 (3) おいしさ (3) 研究 (3) 行政 (3) 話し方 (3) 情報 (3) 温暖化 (3) セールス (3) マナー (3) 効率化 (3) トーク (3) (3) 民主化 (3) 会話 (3) 産業革命 (3) 魔改造 (3) 自然 (3) チーム (3) 修行 (3) メディア (3) 民俗学 (3) AI (3) 感覚 (3) 変遷 (3) 慣習 (3) エンタメ (3) ごみ問題 (3) 食品衛生 (3) 変化の時代 (3) 和食 (3) 栄養 (3) 認知 (3) 人文知 (3) プレゼンテーション (3) アート (3) 味噌汁 (3) ルール (3) 代替肉 (3) パーソナライゼーション (3) (3) ハレとケ (3) 健康 (3) テクノロジー (3) 身体性 (3) 外食産業 (3) ビジネスモデル (2) メタ認知 (2) 料亭 (2) 工夫 (2) (2) フレームワーク (2) 婚礼 (2) 誕生前夜 (2) 俯瞰 (2) 夏休み (2) 水資源 (2) 明治維新 (2) (2) 山林 (2) 料理本 (2) 笑い (2) 腸内細菌 (2) 映える (2) 科学 (2) 読書 (2) 共感 (2) 外食 (2) キュレーション (2) 人類学 (2) SKS (2) 創造性 (2) 料理人 (2) 飲食業界 (2) 思い出 (2) 接待 (2) AI (2) 芸術 (2) 茶の湯 (2) 伝え方 (2) 旅行 (2) 道具 (2) 生活 (2) 生活文化 (2) (2) 家庭料理 (2) 衣食住 (2) 生物 (2) 心理 (2) 才能 (2) 農業 (2) 身体知 (2) 伝承 (2) 言語化 (2) 合意形成 (2) 儀礼 (2) (2) ビジネススキル (2) ロングテールニーズ (2) 気候 (2) ガストロノミーツーリズム (2) 地域経済 (2) 食料流通 (2) 食材 (2) 流通 (2) 食品ロス (2) フードロス (2) 事業 (2) 習慣化 (2) 産業構造 (2) アイデンティティ (2) 文化伝承 (2) サスティナブル (2) 食料保存 (2) 社会変化 (2) 思考実験 (2) 五感 (2) SF (2) 報徳 (2) 地域 (2) ガラパゴス化 (2) 郷土 (2) 発想 (2) ビジョン (2) オフ会 (2) 産業 (2) 物価 (2) 常識 (2) 行動 (2) 電気 (2) 日本酒 (1) 補助金 (1) 食のタブー (1) 幸福感 (1) 江戸 (1) 哲学 (1) SDG's (1) SDGs (1) 弁当 (1) パラダイムシフト (1) 季節感 (1) 行事食 (1)
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

-今日のエッセイ-たろう
-, ,