今日のエッセイ-たろう

知識が読解力を助ける武器になる。 2023年2月15日

知識というのは、読解力を助けるためのツールだと思う。誰かにひけらかしてマウントを取るのも良いけれど、それで尊敬を集めるのもいいけれど、それだけじゃもったいないんだろうな。

たべものラジオを始めてからというもの、やたらと知識が豊富になってきた。当たり前だけれど、これまでの人生で最もたくさんの読書と勉強をしているんだ。これだけやって、今までと変わらないのであれば困ったことになる。おそらく、ぼくの周りにいる人達の中でもそれなりに知識量が多い部類にはなるんだろうな。

飲み会でそういった知識をひけらかせば、多少は「スゴイねえ」なんてことを言ってくれるかもしれない。けれど、あっという間にその場の空気から隔離されたような状態に陥ることは間違いない。そんな知識なんぞは求められていないからね。

色々と勉強して、いろんな情報が脳内に蓄積されるようになって、そして劇的に変わったことがある。それは、情報の受信感度が上がったこと。今までだったら「へぇ~そうなんだ。」という感想とともに、右から左へと受け流していたかもしれない。面白そうなネタだったら、「今度誰かに話してやろう」と思って、覚えておいたかもしれない。そんな程度だったはずだ。

ところが、なにかの情報に触れたときに見えてくるものが全然違う。映画を見るだけでも、それはかなり違う。一昔前に流行したディズニー映画の「パイレーツオブカリビアン」は、大航海時代から、三角貿易、七年戦争、独立運動などが絡み合っている世界観。ただ、ジャック・スパロウの冒険譚として見るだけでも面白いのだけれど、それと同時に時代背景が見えてくるともっと面白くなる。船のデザイン、裁判の仕方、酒場の様相。どれ一つとっても、その映像から読み取れる事柄は多くなる。そのうえで、登場人物たちがなぜこのような行動をしているのかもよく分かるようになる。と言った具合だ。もっと言えば、ディズニーランドのアトラクションのカリブの海賊は、ウォルト・ディズニー自身がその設計を手掛けた最後のものだそうだ。ということも、その世界観を見る視点がもう一つ増えるようで面白い。

何でも良いんだよね。最近、ジブリ映画の「風立ちぬ」を見せてもらった。あんなにエンジンが緻密に描かれているのに、どうも他の構造がファンタジーっぽいんだよね。不思議だなあって思ってたら、あれ主人公の妄想の世界を示唆しているという説もあるらしいんだ。それって言うのも、宮崎駿という人は「飛ぶもの」に対して、徹底的にリアリティーを求めるらしいのね。だから、構造が緻密でないのは不自然だというのだ。

ジブリで飛ぶといえば、「紅の豚」だ。紅っていうのは、赤だよね。赤っていうのは、共産主義社会主義を表す色だ。で、その世界観で豚といえば、共産主義の裏切り者。つまり、資本主義民主主義の世界に落ちていった人のことを指している。つまり、主人公のマルコはかつての共産主義者で、大戦後のイタリアでニヒリズムとともに生きているという映画ということになるんだとか。ちょっと、世捨て人のようでもあり、理想を置き去りにして現実社会で生きていく強かな人のようでもある。そして、それは宮崎駿自身を投影したものだという。宮崎駿という人は、学生運動に身を投じたことのある人物だ。そこから連想すれば、紅の豚の精神世界を読み解くことは出来る。

読解力は、こうしてあらゆる知識に助けられている部分がある。国語のテストで、長文読解というのがあったよね。基本的には、その文章の中から必要な情報を読み取ることが課題になっている。そうなんだけど、そこにない知識があれば、もっと解像度は上がるはず。最近の大学試験は、そこにない情報を求める問題も出るようになったらしい。

知識を使って読解力を助けていると、目の前の情報の読解方法もぼんやり見えてくる。そんな気がするんだ。ほとんど直感的に、なんとなくこんな感じだろうと思える。という程度なんだけど。もちろん、論理的に情報を読み解く方法はある。あるのだけれど、何度も繰り返すうちに感覚でつかめるようになる。ぼんやり読書をしていても、なんとなく言いたいことが見えてくる。ということも、ちらほらと体験するようになるんだ。

自慢じゃないけれど、小学生くらいのころは国語のテストで長文読解で困ったことはなかったんだよね。それは、単純に読書量が多かったからだと思う。なにしろ、学校の図書室にある本は全部読んだからね。読んだ内容なんて、ほとんど覚えていない。だけど、文章の傾向はインストールされたんだろうね。

残念ながら、成長とともに文章の読解力は低下していった。小中学生をピークにして、読書量はどんどん減ったからね。少し表現が大人っぽくなるだけでわからなくなってしまう。というわけだ。最近、小学生時代を超えるペースで読書しているから、それを取り戻すくらいのことは出来始めているかな。

読解する方法は、背景の知識を得ること、目の前の現象を観察することから始まる。という、シンプルなパターンを身につけていくわけだ。そうすると、例えばなにかの課題にぶつかったときに、直感的に背景にある情報の収集と事象の観察を始める。表層部分だけを見て、感覚的に怒りだすなんてことをしても、なんの意味もないように思える。確かに腹の立つ言動ではあるけれど、その言動に至るまでにはなにかぼくが知らない状況があるのかもしれない。というくらいには考えられる。で、よくよく事情を聞いてみると、無理からぬことだと思えることもある。もちろん、そうでもないこともある。とりあえず、話を聞いてみたことでわだかまりは多少軽減されるだろうから、まぁ良しとしよう。というくらいには着地する。

今日も読んでくれてありがとうございます。ぼくが尊敬する友人が、30代半ばを過ぎてから「鈍器本」を読めなくなってきた。体力的にもしんどい。と言っていた。ぼくは、それがない。というのも、彼ほどちゃんと勉強してこなかったからね。ぼくが最近知ったことも、彼はもっと早くに掴んでいる。リスナーさんの中にも、びっくりするほど物知りの方も多くて、若い人もいる。僕の場合は、ただただ遅咲きなだけで、今になって学ぶことが楽しくなっちゃったというだけなんだ。ま、それでも楽しいから良いか。大切なのはこれから。今の自分が、未来の自分より一番若い。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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