今日のエッセイ-たろう

適材適所の功罪。 2024年2月20日

適材適所。なんだか素敵な響きだ。人間誰しも得意なこともあれば苦手なこともある。だから、お互いに得意なことを活かしてチームを作れば良いという考え方は、けっこう好きだ。

以前、イベントを企画したときには、友人が企画書やテキストの作成を色々とやってくれた。きらいじゃないしやらないこともないけれど、ぼくにとっては面倒なこと。ずっと申し訳ないと思っていた。イベントが終わって打ち上げのときにその話をしたら、彼にとっては造作もないことだと言う。逆に、彼から頼まれていた各団体との電話連絡や交渉は、ぼくにとっては低負荷の仕事。関係を築いてしまえば、あとは電話するだけ。お互いに低負荷の仕事をしていたんだねって笑いあったことがある。

スポーツの世界でも、性格や身体的な特徴や技術などによって、ポジションが違う。能力の問題もあるけれど、どんなプレイが心地よいと感じるかというのも大事なんじゃないかと思うんだ。もし、最初からわかっていれば。例えばコーチが的確に見抜くとか、場合によっては遺伝子情報を用いて的確にアドバイスしてくれることもあるかも知れないが。だとするならば、遠回りせずに済みそうな気もする。

なんとも便利で効率的な世界観だけど、これには疑問点も多いと思っている。前述の例をとるならば、テキスト作成の仕事をしてくれた友人に感謝出来るのは、ぼく自身が同じ仕事を行った経験があるからだ。企画書を作る段階でどんな情報が必要なのかがわかるから、事前段階で準備しておくことが出来る。サッカーで言うなら、パスを受け取ったあとのことを知っているから、パスを出すときにどうすれば快適なのかをリアリティを持って想像できる。案外大切なことなんじゃないかと思う。

もうひとつ。イノベーションって、苦手と得意の交差点に生まれそうな気がするのだ。

例えば、営業の仕事をしているとする。営業と言ってもいろんな仕事があって、交渉や商談のような実践的な会話もあれば、対人関係を築くのも仕事のうちという場合もある。それから、商談資料を作るのも、それを効果的に見せるのも、ウェブデザインも、誘導するための導線を考えるのも全部営業だ。あまり話すのが得意ではない人が商談をする場合、あらかじめ資料を作るという努力が出来るかもしれない。しっかりと準備すれば、それは立派な営業になる。一方で話が得意な人は、まるで紙芝居のような資料を作るかもしれない。資料はトークの補助という扱い。

苦手なことと得意なことが両方あって、苦手なことを補完するための工夫が生まれる。大抵の場合、得意で好きなことだけをやっていれば成立するなんてことはないのだ。いつも、めんどくさいことや苦手なことがセットになっている。やりたいことをやるためには、やりたくないこともやり抜く力が必要になる。

だからこそチームが必要になるし力を発揮するわけだ。その仕事が改善されるときには、苦手だと思っている人の思考というか工夫も有効だと思うのだ。だって、めんどくさいじゃない。どうにかして簡単にしたい。得意な人には思いつかないアイデアを持ち込みたくなるというものだ。で、それを実現するにあたっては、得意な人の知見が必要になる。

今日も読んでくれてありがとうございます。あまりにも最初から適材適所を突き詰めてしまうと、イノベーションが生まれにくいのかな。という気がしているんだ。かといって、いつまでもアンバランスなままというのは気持ち悪い。ちゃんと理解したうえで、任せ合う。というのが適材適所。ってことなのかな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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