今日のエッセイ-たろう

面倒くさい読書の仕方。のちょっと良いところ。 2025年5月29日

本を読み始めるときは、ちょっと面倒くさいなとか、よっしゃ読むか、みたいな感じで、腰が重いこともある。肉体労働の後だからなのか、それとも他のことで精神力の残高が少なくなっているのか。そんなことはわからない。そんなときは、しっかり椅子に座るのではなく、積読本を適当に手にとって立ち読みする。読み始めてしまえば、だいたいの場合は面白くなって読み進めてしまう。そのうち、なんで立ちっぱなしなんだっけ?となって、腰を据えて読み進めることもある。

勢いに乗って読み進めていると、なんだかいろんなことが分かったような気になるのだけれど、本当に理解できているのか不安になる。それに、すぐに忘れてしまいそうな、そうだな、ちょっとした恐怖心のような感覚もある。で、情報量が増えてくると、メモを取りたくなる。忘れちゃイカン。メモメモ。という感じ。だけど、メモを取るという行為と、ちゃんと理解して記憶に定着するということが繋がっているのかはよくわからないでいる。

メモを取りながら読書をすると、スピードがめちゃくちゃ遅くなる。先日、試しにメモを取るのをぐっとこらえながら読み進めてみたところ、半分以下の時間で読み終わってしまった。遅くなる代わりに、ちょっとおもしろい現象が起きている。さっさと読み進めていたときには気が付かなかった疑問が色々と湧いてくるのだ。

完全に書き写すというわけじゃなくて、自分なりに要約してノートに書き出していく。うまくやれば、1章くらいの情報量をノート1ページに集約できる。なのだけれど、要約して文章や図解で書き出していくと、どうにもうまく繋がらないことがあるのだ。本文中ではこれとこれが因果関係で繋がっていると言っているのに、自分の言葉に置き換えた途端にロジックが破綻して見える。破綻しているから本がおかしいのじゃなくて、ぼくの理解がどこかで食い違っているはずだ。一旦はそのスタンスで理解しようともがき苦しむわけだ。

ネットで検索したり、他の参考書籍を読んだり、著者が参照している書籍や論文にあたったり、最近では生成AIに相談したりもする。一番手っ取り早いのは、何度か読み返すこと。とにかくあれこれ悩んでいると、キーワードとなりうる部分を読み飛ばしていたということに気がつくこともある。いや、ちゃんと読んでいたはずだし、普通に読み進めているときには、その部分を踏まえて進んでいたはずなのだ。にも関わらず、ふと抜けてしまう。案外、ここがポイントだったんだなぁ、ということに気がつくことが出来る。

本の中で数千文字を費やして説明していることを、強引に1ページのノートにまとめる。単語ばっかりが並ぶこともあるんだけど、それがまたおもしろい現象を引き起こす。本だったら、数ページ前に書かれていた内容が、次の項目といっしょに書き並べられるのだ。なんというか、別々の知識が強制的に距離を縮めたような感じ。そうすると、これの背景ってここで繋がっていたんだっけ?という気づきを得ることがある。どんどん読み進めていると、前章で語られていたことのディテールが記憶からこぼれ落ちてしまうのだ。著者の書きっぷりが良ければよいほど、それに気が付かずに次に進むことが出来てしまう。これを、自分で書いたノートの中ではつぎはぎながら隣接することになる。つまり、ある程度雑にすることで、俯瞰してみることが出来るというわけだ。

ぼくの脳がもっとハイスペックだったらこんなことしなくても理解出来ることもあるだろうにな。などと思うこともあるけれど、処理速度はそう簡単に上がることもないし、だいたいこのあたりが限界だろうと思っている。本当に賢い人の脳のスペックを10だとして、ぼくが5くらいだとする。10の人が7とか8のパワーで処理し始めたらどうしようもないのだけど、案外3とか4くらいしか使っていない人もいるんじゃないか。という、しょうもない見栄と競争心で自分を納得させながら、じゃあぼくは頑張って5のうちの5を使い切ろうなどと思っている。そりゃ疲れるよね。

今日も読んでいただきありがとうございます。久しぶりに本を読み進めていたら、びっくりするくらいページがめくられていってね。収録するときまで覚えていられるか不安になっちゃった。だけど、今回の参考書籍の中に、いわゆる鈍器本が3冊くらいあるものだから、これはちょっと丁寧に読んでいられないなと。それでなくても内容が濃い本が多いのに、ちゃんとまとめきれるかなぁ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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