今日のエッセイ-たろう

歴史学習で「年」を暗記するこ理由。 2023年6月6日

中学高校時代、いわゆる社会科目が苦手だった。特に歴史。もっと言えば世界史。さらに細かく言うと、個人名や年を覚えさせられるのがなんとも苦手だった。カタカナの名前なんかは、もうちっとも頭に入ってこなかったたし、中国史だと読み方は一緒なのに違う漢字表記だとか、全く同じ名前なのに別人とかがあって、三国志を読んでいると登場人物が多くてわけがわからなかった。出来事の年なんかは、意味がないとすら思っていた。

思っていた。と過去形で表現したからには、今は覚える意味があると思っているということだ。年を丸暗記することにも、実は良いことがあると気が付いた。単純に言ってしまえば、めんどくさいのだ。覚えるのが面倒なのではなくて、イチイチ確認することのほうが面倒。覚えていれば考えなくて済む。

明治元年は西暦何年だったかな。ということは考えない。1868年と覚えている。アメリカの南北戦争が1861年から1865年の4年間。黒船来航は1853年。現在の日本は、大東亜戦争の影響もあってアメリカの影響が強いと言える。けれども、明治時代はイギリスとの繋がりが強くなったわけだ。その遠因のひとつとして南北戦争が関わっている。黒船はアメリカ船籍で、アメリカが日本に開国を迫ったわけだ。なのに、日本の外国人居留地にやってきた人たちの多くはイギリス人だった。もちろんアメリカ人もいたけれど、イギリス人がおおかったのはなぜか。それは、日本が開国したばかりの頃にアメリカでは内戦が起きていたからだ。外国にかまっているほどの余裕がなかったと言える。

これは、歴史年表を見ればわかることだし、こうして解説されれば、そういう見方があるんだなと分かる。ただ、学習の過程では上記のような俯瞰ではなく、もっとミクロな表現から学んでいくこともある。アメリカの歴史に関する本を読んでいて、明治政府との関連について言及されていることは少ない。この時代の日本ってどうだったのかな。と思いを巡らせれば、年表を開くこともあるかもしれない。というくらいのものだろう。

もし、歴史年表のなかのキーポイントだけでも暗記していたらどうだろうか。イチイチ調べることもなく、だいたいの前後関係を把握することが出来てしまう。秒で済む話だ。さらに、少しばかり詳しくなれば相関関係や因果関係に気がつくことが出来るかもしれない。まるで直感が働いたかのごとくに、「もしかしてこれはあの出来事に影響しているんじゃないだろうか」という問いを立てることも出来る。

歴史が苦手な弟にその話をしていたら、数学でもやはり同じようなことはあるという。頻繁に登場する数字があって、その積なんかは暗算ですら無いというのだ。これとこれを掛け算したらこの数字だよね。というのは丸暗記なのだ。文章を読んでいて11×11が現れたら、その時点で121と読み替えていることすらあるらしい。結局、頻出事例に関しては、考えるよりも覚えてしまったほうが早いのだ。

モーターを作るときには、モーターのパーツのそれぞれの細かい役割や形状や、その他いろんなことを考えて作る。だけど、作られたモーターを購入するのであれば、モーターをどのように活用するかを考えるだけだ。人間の思考力には限界があるだろうから、思考にかかるコストを削減して活用方法だけに注力することが出来る。イノベーションはそうして生まれてきた。ニュートンが「巨人の肩に乗る」という表現をしたらしいのだけれど、知の集積というのはそういうことだろう。それが、個人の思考にも大いに影響しているのだろうと思うのだ。

少々話がズレてしまった。年を覚えるということは、イチイチ年表を開いていろんな事柄の因果関係や相関関係を調べなくても想像がつくということだ。その分、因果関係について考察するためにエネルギーを費やすことが可能になる。

とはいえ、覚えるのが嫌だとか苦手だという人もいる。その場合は、年表を開けば良いだけのことだ。覚えるのが良いか調べるのが良いかは、それぞれ個人の判断で良いのだろうと思う。歴史のテストなんてものは、横に年表を置いた状態で考えるくらいの問題にしても良いとすら思っている。

個人の意見だけれど、歴史を習い始めたばかりの中学生には、丸暗記することのメリットとデメリットを事例とともに紹介しても良いと思う。もしかしたら、こうした意味を体感できるような授業を序盤に行っても良いと思う。それだけを目的とした時間を数時間作ってしまうのだ。で、どっちでも良いよ、と言う。暗記は学ぶためのツールのひとつという捉え方である。

だから、テストの穴埋め問題で「江戸幕府が成立した年を書きなさい」みたいなものはいらなくなる。ということを思っている。

今日も読んでくれてありがとうございます。歴史教育の専門家たちが良いと思って実施されているプログラムなんだろうけどね。素人のぼくから見ると、こんなふうに思えるんだよ。目的と手段を切り分けて、テストでは何を計測するのかを明確にしたらいい。と思うだけど、明確になっているんだろうな。いや、なっていて欲しいよ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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