生ゴミのたどり着く先。現代式循環の仕組みづくりは可能なのか。 2023年6月7日

最近、「このゴミはどこへいくのだろう」と気になっている。いや、わかっていると言えばわかっている。ゴミ焼却場へ運ばれるのだ。めんどくさい話だけれど、ゴミが燃焼されて、その後のことが気になるのだ。多くは焼却された後の燃えかすや空気中に放出されたものは、その後どうなるのだろう。

おそらく、燃カスはどこかに埋められるのだろうと勝手に想像している。で、いつか埋められたものが炭素となって、地中に固着する。数百年、数千年の時を経て化石燃料になるのかもしれない。もっと早い段階で溶け出して海へと流れ出るのだろうか。気にはなっているものの、さすがにこれ以上の学習時間を生み出すのが難しいので、なんとなく横に置いたまま生活している。

仕事柄、一番気になるのは生ごみ。残滓と呼ばれるものだ。普通に考えれば、わざわざ燃やさなくても埋めれば良いと思うのは、田舎暮らしだからだろうか。周囲を見回せば畑はあるし、かつて畑だった耕作放棄地も広がっている。

埋めれば、空気中に温暖化ガスを放出することもなく微生物たちがせっせと分解してくれるだろう、と思ってしまうのだ。

農家の人に聞いてみると、畑の隅には残飯を産めるための穴を掘ってあるという。魚や獣の骨は分解されるのに時間がかかるらしいのだけれど、良い土壌であれば野菜などはけっこう早く土になるらしい。回収ゴミは減って軽くなるし、畑の肥料にもなる。一石二鳥というのは、まさにこのことであり。今更こんなことを一生懸命に語る必要もなくて、元々日本中のあちこちで行われていた「あたりまえの日常」だったのだ。

作物は土から栄養を吸収して成長する。作物を食べるとういことは、土にあった栄養を食べるということである。では、土の栄養はどこからやってくるのだろうか。土壌に降り注いだ水や動植物といった有機物が分解されたもの、近隣の岩などから溶け出してきたもの。そして、人間が肥料として投入したものである。

現在の日本では、肥料はどこかで購入するものだ。地域の農協や肥料生産工場、それらの肥料の原料は海外産だということもある。これが一体何を意味しているのか。

例えば、北海道で育ったじゃがいもは、その多くが東京などの大消費地へと運ばれる。国内の移動に限って言えば、北海道の土壌の栄養が東京へ移動したということになる。人間の栄養として体内に接種されるが、使われなかった残滓は東京の近くで燃やされることになるのだとすると、北海道の土の栄養が東京で空気中に放出されることになるということだろう。もちろん、排泄物にも未消化の栄養があるのだろうから、それがどうなるのかも気になるところである。

「土に含まれる栄養素」が、日本全国を駆け巡っている。世界中を移動している。バーチャルウォーターという考え方があるけれど、それと同じような見方をすると、実は土の栄養も移動している気がする。

であるならば、だ。燃焼せずに土に戻すことはできないのだろうか。せめて、空気中に放出するのではなく、地面に固着させる。炭素循環のことを考えれば、空気中の炭素量が多くなっているのが問題なのだから、地中に固着させるのが正解のハスだと思うのだ。

素人の妄想でしかないので、専門家の知見を借りてみたいところだ。実は、そのうちにたべものラジオでも土や水や炭素について取り上げようとは思っているのだ。だから、しっかり学ぶべき時がやってくる。いくらか書籍も購入したが、かなりのボリュームなので、まだそこに到達していないという情けない状態である。

今、妄想を膨らませているのは「大消費地近くに建設する生ごみ専門の処理場」だ。一般家庭だけでなく、飲食店が集中している地域である。そうした場所から生ごみを集めて、ペースト状に加工してから微生物に分解してもらう。最新のテクノロジーを使えば、匂いが出なくて短期間で栄養たっぷりの土ができるんじゃないだろうか。

残滓回収などの輸送には地方自治体と連携できれば良いよなあ。とか、上質な土をどうにかして畑や山に戻せると良いよなあ、などと考えている。どうやったら、資本主義のシステムの中でマネタイズできるのか、継続可能な事業になるのかというところが難しいところだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。社会課題を解決するのが目的だから、大儲けなんてしなくて良いんだよね。ちゃんと持続できて、従事する人たちが普通に生活できることが大切。なのだけれど、こういう事業ほどマネタイズが難しいのが現代社会というものなのかもしれない。あ、いやぼくの能力が足りないだけなんだろうけどね。

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