今日のエッセイ-たろう

まちづくりの構造を改めて考えてみる。 2024年8月7日

東京って、やっぱり人が多いよね。当たり前だけどさ。23区なんかは特にね。誰かが、人間しか見かけないことに違和感があるって言っていたけれど、ホントにそうだと思う。田舎にいれば人間以外の動物を見かけるのは日常だから。タヌキを見かけたとか、カモシカを見かけたなんてことは、住宅街ではレアだけれど、それでも「ああそんなこともあるよね」というくらいのもの。

日本のまちづくりっていうのは、どこかにモデルがあってそれを水平展開していくスタイルなんだ。と聞いたことがある。昭和も平成も、ずっとそうだ。じゃあ、そのモデル都市ってどこなのかっていうことになるのだけれど、それが東京だという。

例えば東京で集約型商業施設が成功する。地方の大きい都市でも展開してみると、東京ほどの売上ではないけれどそれなりの成果を出す。さらに郊外の都市でも同じことをする。細かいことは一旦横に置くけれど、基本的にはこの構造。で、この都市開発は国が地方に対して指示を出すというのが一般的だったのだ。地方交付金というのは、そのためにあるといっても良い。語弊があるけれど、まぁ実態はそうだろう。

そういえば、掛川の駅前開発のビルも、そんな経緯だった。計画の実行に躊躇している地方行政に対して、実行しないなら予算を減らすという国。そんな構図があったらしいと噂になっていた。

近年になって、地方創生が声高に言われるようになったのは、上記の構造から脱しようということらしい。地方創生が始まってから、各地の首長が入れ替わっていったのは、たぶん構造の変化に対応するためなんじゃないかな。タイプが違うもの。言われたことを着実に実行するのと、自分で発想して行動を起こす。どちらが良いという話じゃなくて、前者のタイプに後者を求めると、すぐには対応できないよってことだろう。

過去はさておき、東京をモデルにしたまちづくりが地方に当てはまるわけないじゃないか。と、現役世代のぼくらは思ってしまう。商売をやるとわかるのだけれど、人口密度が決定的に違うのだ。つまり商圏の広さと、そこに住まう消費者の数が違う。マーケットのサイズも属性も違うのに、同じビジネスモデルが通用するなんて考えるほうがどうかしている。

自助、共助、公助という考え方がある。自分のことは自分でやる。周りのみんなで助け合う仕組みを作る。行政が全体をみていく。都会ってね。真ん中が抜けやすいんだよ。顔が見えないから、共助の仕組みが機能するための環境が消失しやすい。

例えば、商店街みたいなところに子供がたくさんいる。学校の行き帰りに必ずそこを通るとするじゃない。だいたい朝の通学時間なんてのは、商店の人たちが開店準備をする時間にあたる。そこを6年間、ほとんど毎日通るわけでしょう。いつの間にか顔見知りになる。そのうち、お互いの名前というか、ニックネームで呼び合うようになってくることがある。屋号から「◯屋のおっちゃん」とか、大人同士の会話から「いっちゃん」なんてことを子供が覚えていく。ぼくにも経験がある。当然だけど、ぼくの名前を知っている人もいる。

顔と名前がわかると、共助が生まれやすい。もちろん、それだけでどうにかなるなんてことはないのだけれど、なにか事を起こそうとなったときには、自然に共助につながっていく。歴史を見るとこれがよくわかる。藩校や塾っていうのは、共助の流れで生まれた教育機関。これ良いよね。もっと拡大しようよってことになったときに、公助へと変わっていったのだそうだ。

まちづくりって、行政やデベロッパーがやるものだけじゃなくて、共助関係の中から生まれたものもかなり多いんだね。ただ、無償でやっていると続かないから、持続可能な形として経済を利用する。ぼくら地方は、こういう根本的な構造をちゃんと理解しなくちゃいけないと思ったんだ。

今日も読んでいただきありがとうございます。行政が頑張る必要があるポイントも多いんだけどね。決定的な弱点があると思うんだ。行政だけだと、活気がない。町の人達が一緒になって熱狂すると、なんだか知らないけれど盛り上がっちゃうんだよね。居酒屋で飲んでいても、その話で盛り上がっている人たちに出会ったりしてさ。そういうのが、なんだか心地良いって思える。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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