コミュニティ間の相互理解を助ける通訳という役割。 2023年10月4日

既にどこかで話したことだけれど、改めて通訳ってスゴイよねっていう話。AIによる言語翻訳はどんどん進んでいるのだけれど、通訳は当分の間人間の仕事なんじゃないかって思うのだ。

「SKSJapan2023」に登壇させてもらったときのことだ。とある人に「さっきの内容がとても興味深くて良かった」と褒めていただいた。その方は、シンガポールから来られていて、日本語は全くわからない。会場では同時通訳音声を受信することが出来たから、それを聞いていたのだ。

セッションのどの部分が面白かったのかと聞くと、「ハレがインフレを起こしている。ハレとケというリズムを社会文化として実装することで、みんなの幸福度を一定に保つ仕組みになっていたのではないか。それは、相反過程理論に照らし合わせると、そう解釈できると感じている。」という発言だという。もっと長く柔らかくしゃべったけどね。

一応、相反過程理論については簡単な紹介をしたから、もしかしたらそれを英語に変換したのかも知れない。けれど、ハレとケの概念は「日本人なら共有できるよね」という思い込みがあるから、あんまり解説しなかったんだ。にも関わらず、ちゃんとニュアンスが伝わっていた。これには驚いた。どうやって英語にしたら良いか、ぼくには皆目見当がつかない。日本の生活文化、思考のパターンを把握していないと「話者の意図を汲み取って、聞き手に伝わる言葉に置き換える」なんてことは出来ないのだ。

つまり、通訳をされた方は、ぼくの意図を明確に汲み取ったし、英語文化圏で理解できる表現に書き換えたのだ。これは、双方の言葉を知っているだけでは出来ない。双方の文化そのものを理解していなければ難しいことだろうと思う。直訳が良いとは限らないというのは、まさにこういうことなのだろう。

言語を通訳するということは、同時に異なる文化や社会背景を持った者同士の理解を深めることでもある。と言い換えても良いのだろう。コミュニティの橋渡し役と言っても良い。

言語が異なるほどには差異がないけれど、もっと小さなコミュニティ間でも文化や背景が違うということはある。直面している生活も仕事も、課題も違う。育ってきた環境が違うから、思考パターンにも違いがある。というのは、日本国内だけを見ていてもよくあることだ。

政治の世界で、議員は市民の声を政治に届けるという役割があると言われることがある。代議士と表現されたことがあるように、それは一定真実だろう。だけど、それって一方通行なんじゃないかなって思うんだ。

なぜ行政はこういうことをしたのだろう。どういう思考があって、その背景は何だったのだろう。そういう部分について、多くの市民は知らない。よほど興味関心を持ってウォッチしていて、自ら情報を取りに行かない限りは知らないというのが一般的。同じように、行政に携わる人達は、市民が反対しているとしてもその背景を知らないということもあるだろう。

そこで、市議会議員のような人たちは双方の通訳として活躍する。双方の背景を理解した上で、双方に理解できる言葉で伝える。当然だけれど、そこには議員本人のバイアスや意見が入るだろうけれど、それで良い。そもそもバイアスのかからない情報なんてものはほとんどないだろうしね。

通訳としての役割をまっとうするには、誠実に正しく観察して、その事象そのものや周辺の事柄について真摯に勉強していなければ到底かなわない。実際に、通詞として活躍されている方々は、語学以外についてもかなり勉強されていると聞く。

こうした学びの積み重ねが通訳としての機能をより良いものにする。で、結果的に学びの中から、自分なりの意見を構築して言って、政治活動に活かすことが出来るようになっていくって感じじゃないかと思うんだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。政治を例にしてしまったので、重たい感じになっちゃったんだけどさ。いろんなところで似たようなことは起きるよね。アカデミック分野とビジネスの橋渡しとか。職人とテクノロジーとか。他にもめちゃくちゃたくさんある気がするんだよね。たべものラジオが、橋渡し役になったり、橋渡し役の助けになればいいな、なんて思っている。

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