珍しくコンペティションに参加する機会があった。といっても、選考委員としてなんだけどね。詳細はさておき、とある事業の受託企業を選考するのだ。数社のプレゼンテーションを見て、どの企業と契約するのが良いかを判断するお手伝い。
こういうお手伝いの機会はあんまりないよね。
一通り終わって、ぼくの採点では最終選考は2社のうちどちらかだよなぁ、と言う感覚だった。選考委員的な人はぼくだけじゃないので、合議で決める。そこからが本番ね。
だいたい、みんな似たような評価だったから、2社までは絞れた。
ひとつめは仕上がりも美しく、見た目を整える技術はピカイチ。モノづくりのクリエイティブな部分だけじゃなくて、プロモーションまで見据えた計画。商品に辿り着く前から、その後までを想定した仕掛け。独創的とまではいかないけれど、堅実に構築されている。
ただ、タイムテーブルはホントにこれで良いのかというくらいにざっくり。それから、詳細のデータ取得がフワフワしていて、エビデンス集めに苦労しそうだ。
もうひとつは、見た目はそこまで美しいとはいえないが、技術力は高い。独自の発想で、消費者の心をつかむモノづくりが出来そうだ。そういう意味での実績がある。タイムテーブルもデータの取得も緻密に行われている。というか、プレゼンテーションすらもきちんと練習してきたんだろうなって思える内容だった。時間もピッタリだったしね。
さてさて、採択されたのはどちらだと思う?
満場一致で前者なんだ。後者のモノづくりにかける情熱も捨てがたくて、個人的には好きなんだけどね。それなりに実績もあるし、確固たる信念を感じる内容だった。自信があるんだろうね。それに見合った内容でもあったし。
だけど。
そうなんだよ。実はここが致命傷だったんだ。ちょっと理想を追いすぎている感覚があってね。プライドもあって、柔軟性にかける。そんなインスピレーション。その直感は質疑応答でハッキリしてくる。やんわりと上手に回答してはいるけれど、交渉で手こずりそう。
委託事業って、丸投げのパターンもあるけれど、相談しながら一緒に勧めていくことのほうが多いよね。今回の案件も後者だったんだ。計画が完璧だったとしても。まぁ、完璧な計画なんて存在しないんだけど。仮にそうだったとしても、互いに相談しながら進めることが出来るかってことが重要になる。じゃないと、お互いに納得したモノづくりにならないから。
多少計画に甘さがあっても、柔軟に相談しながら事業を進められること。これは大きなポイントになるんだよね。これに関しては、ぼく自身の失敗経験からも確かなことだと感じている。
なんというかな。お見合いみたいなものだと思っているんだ。選んで終わりじゃない。その後のお付き合いがあるわけでしょう。結婚生活なんて、一緒に協力しながら作り上げていくわけだよね。事業だって同じで、一つのゴールに向かって共同作業をするんだから、そういう意味でのパートナーのほうが納得できる。
クライアントが納得できることと、消費者が喜ぶことは必ずしもイコールではないけれどね。それでも、クライアントの思いを加速させて、消費者に喜んでもらおうと一緒に働く事ができるというのはとても大切なんだよね。
つまり、プレゼンテーションって、プレゼン資料や内容だけで決まらないってこと。もちろん、提案企画書はちゃんと作ってくるのは必要。その中身もしっかりと準備されていること。そこは最低限のところなんだよね。そこをクリアしたあと、必要になるのはパートナーとして一緒に働きたいか、だ。
というようなことを、クライアントに提言してきたんだけど、どう受け取られたかな。ぼくの仕事はここまでだけから、これ以上やることはない。
今日も読んでくれてありがとうございます。どうということはないんだけどね。なにがどんな影響を及ぼすのかはわからないってことなのかな。それとも、相手のことをちゃんとわかろうとしていたら、もう少し違った結果になっていたってことなのかな。相性ってあるもんね。