今日のエッセイ-たろう

揚げ足取りのディスコミュニケーション。2022年11月21日

発言を切り取られる。有名人の発言の一部が失言として報道される。というのは、今に始まったことではないけれどね。なんだか世知辛いよなあ。確かに、それを言っちゃあ駄目だろうということもある。けれども、しっかりと発言の全体を聞いてみると、そんなにひどくない。細かな表現については、ところどころで気になる言葉遣いもあるにはあるけれど、「伝えたい主旨」をちゃんと聞き取ると問題ないような場合もけっこう多いんだよね。

意見の分かれるところだからね。反論もあるだろうけれど。

こういった報道があると、発言した人は釈明に追われる。それは本来の意図とは違う。言葉遣いに問題があったことは認めるけれど、主旨はそこじゃない。という発信をする場合もある。先週の報道もそんな感じだったよね。

気になるのは、「閣僚であれば、発言の一部を切り取られる可能性があることを自覚して、発言には注意したい」という様な内容のセリフ。

確かに、政治家である以上はそういった覚悟が必要なのだろう。ただ、それは発信者の覚悟の話。でね。この発言を受けて、メディア側が「そうだそうだ。覚悟が足りない」というのはちょっと違う。

今回報道されたことと、その内容はちょっと横においておいて、一般論として話を展開するよ。

論旨と表現方法。これは分けて考える。発信者と受信者は、相互に理解しようとする姿勢があって、はじめてコミュニケーションが成立する。聞き手がどう感じるか、どう表現したら相手にちゃんと伝わるかを考えて発言する。そして、その意図をなるべく正確に汲み取ろういう姿勢で聞く。不明瞭だったり、表現方法がおかしかったら質問する。まずは、そういうのがコミュニケーションの基本姿勢だよね。

身の回りにある普段のコミュニケーションを想像してみたらわかる。雑談でもそうだし、何かの会合で誰かが登壇したときもそう。直接的に間接的に知っている人だったら、その傾向はなお強まる。コミュニケーションなんだからね。

で、発言の中に毒を混ぜることもあるでしょう。なんというかブラックジョークっぽいこと。あと、変にボケたり。とっさに思いついた例え話が変だったり。そんなことは日常茶飯事。話のプロフェッショナルだったら、そのあたりのことはちゃんと出来るようになるべし。という感覚もある。ただ、それは事前に話す内容を精査した場合だろう。原稿を書くとか、それなりに準備が必要なのだ。そんなことをしなくても、上手に喋れる人もいるにはいるけれど、それは才能じゃないかな。訓練も必要だし。ほとんどの人は、コミュニケーションのために事前準備をしないし、訓練もしていない。

そういうのが日常の会話。普段のコミュニケーションの中で、言葉の使い方がおかしかった場合に、そこばかりを取り上げて攻撃することを、「揚げ足取り」って言う。どうだろう。ぼくは、そんなふうに育ったんだけどね。

「発言の一部を切り取られるのが当たり前」だとすると、世の中には「揚げ足取りが必ずあるという前提で発信すべき」だということになっちゃう。それって、ちょっと歪だと思うんだ。確かに、発信者はそういうこともあるという覚悟を持って言葉選びをする必要はあるかもしれない。ただ、揚げ足取りをした張本人が、「対策をしていない方が悪い」という報道を堂々と行っているのは変じゃない?

たべものラジオは零細メディア。聞いてくださっている方々も、みなさん良い人ばかり。だから、ぼくなんかが多少言い間違いをしても優しく訂正してくれる。そこに甘えてばかりじゃいけないんだけどね。でも正直に思うんだ。世界って優しいなって。お互いに歩み寄って、コミュニケーション出来ることが嬉しいじゃない。

もし、揚げ足取りばっかりの世の中になってしまったら、それは世知辛い。世の中を知るのが辛いと書いて世知辛い。そんな世界を次の世代に残したくはないんだよね。

今日も読んでくれてありがとうございます。社会批判というほどのことじゃない。どっちが良いとか悪いとか、そういう話でもない。文化と民度の話をしている。人類は、そのコミュニケーションのほとんどを言語に頼っている。状況によっては、表情も声色も伝わらずに、文字情報だけが踊っている。

こういった状況だと、ディスコミュニケーションを起こしてしまう。という危惧があるからこそ、数多くの書籍などでは「ノンバーバルも大事」とか「メラビアンの法則」とかが語られているんだろうね。歴史上、ディスコミュニケーションのせいで大変なことになった事例はたくさんあるよ。ぼくらも学ばなくちゃね。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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