今日のエッセイ-たろう

自由研究の思い出と、大人の自由研究。 2022年10月29日

自由研究って、今いろんな本とかウェブサービスがあるのね。こんなパターンがあるよとか、こんなのやったら良いよとか、やり方はこんな方法があるよとか。確かに、そういう参考書があると助かるんだろうけれどさ。なんだか違和感があるんだよね。どう思う?

夏休みも終わってずいぶんと経っている。それどころかもう寒いくらいの時期だ。なぜに今更「自由研究」の話をし始めたかというと、たいした理由じゃないんだ。たまたま、過去のポッドキャストを聞いていて「自由研究」の話題が出たから。っていうだけのこと。

そもそも、自由研究ってなんだろうな。

せっかくだから、自由研究について語られているサイトをいくつか見てみたのね。だいたいは、観察と実験。理科だよね。ちょっとびっくりしたのは、DNAを取り出す実験が掲載されていたんだよね。対象が中学生になっていたんだけどさ。そこまでやるかね。想像もしなかったよ。自宅でDNAが取り出せるかどうかなんて考えたこともなかったからね。

実験ってさ、実験方法を考えるのが楽しいんじゃないかと思うんだよね。もちろん、なんのヒントもなければ思いつかないかもしれないけれどさ。どうやったら謎が解消するかを考えて、実験方法を考える。そして、うまくいかなかったら他の方法を考える。何度か繰り返して、やっと実験検証が成立する。とか、そんな過程が楽しいんだと思っていたんだけど。どうなんだろうね。

まぁ、インデックスとしては良いのかな。DNAを取り出すなんてことが家庭でもできるんだよってことがわからなければ、思いつかないかもしれないしね。

そうそう。ぼくが小学生の頃にやった自由研究で覚えているのは「家紋の比較」なんだ。いつだろうなあ。たぶん小学4年生くらいだったと思うんだけどさ。うちの家紋は「下り藤」なんだけど、「丸に下り藤」じゃないんだってじいちゃんが言ってたんだよ。同じ家紋でも、丸で囲っているものと、そうでないものがあるんだって。それから、お店の暖簾に描かれていた家紋は、丸で囲まれているけれど家紋の上部だけが下からちょこっと頭を出しているようなデザインだったんだ。覗き家紋と言うらしいんだけどね。お客様がいらっしゃるような商家で用いられるデザインで、遠慮がちに顔を出しているんだって。下り藤は結構いかついからね。ドーンと表に出すんじゃなくて、頭だけのぞかせるんだとか。面白いよね。

でね。そういうのが面白くて、じゃあ他の家紋はどうなっているんだろうって思ったんだ。海外にも家のマークはあるんだけど、それは鷹とか龍をモチーフにした「強さ」とか「権力」なんかを象徴している感じがするなあって。で、日本の家紋って自然のモノがモチーフになっているでしょう。だから、他にはどんな物があるのかと思ったし、どんなルーツがあるのかなって思ったんだ。で、図書館に行っていくつかの本を借りて調べた。どんな本を見ればいいかわからないから、司書さんに教えてもらってさ。そういうのも面白かったな。

理科の実験でも観察でもないけれど、そういうのも自由研究だよね。だって、自由なんだもん。興味の湧いたことを自由に調べたら良いじゃん。で、そんな中で「あ、これわかったかも!」っていう瞬間があれが良いのよ。発見とか納得とか、そういう体験がいちばん大切なんだと思うんだよね。

ぼくが子供の頃は、炭酸飲料を飲むと骨が溶けるって言われていた。だから「ホントかよ!」って思って、魚の骨を炭酸水に浸けておいて、経過観察したのね。水とお茶と、あとなんだったかな。コーラとか?で比較したんだよ。そしたら、確かに炭酸飲料に浸けておいたものだけ骨が溶けたんだ。あ、ホントだったんだって思って模造紙に書き込んだんだけどさ。ちょっと待って?人間の体の内側で骨が炭酸水に浸されている環境ってあるんだっけ?と思い直してね。また図書館に行って、人体図鑑みたいなものを教えてもらって調べたら、そんな環境がないってことがわかったんだ。じゃあ、飲んでも問題ないじゃん。なあんだ、迷信だったのかって。子供がコーラばっかり飲むのは体によくなさそうだってことで言っていたんだろう、ってことになってさ。同じ理屈だったらビールを飲んだら骨が溶けるってことになるから、子供よりも老人のほうが危険じゃないって話でまとめたんだ。

今思うとムチャクチャなロジックだよなあ。とにかくさ。自由研究をやるなら、面白いほうが良いと思うんだよね。まず最初に興味。好奇心。なぜだろう、ホントかなあ。そんなところから始まって、で自分なりに何かしらの「そうだったんだ!面白い!」っていうポイントにたどり着く。これが良いのよ。もう、ゲームやっているよりも面白いかもしれない。蟻の行列をじっと眺めている子供っていたでしょう?どこまで続いているんだろうとか、餌を運んでいるのを追いかけているだけだとか。そういうのが自由研究のスタート。

だから面白いし、今でもこうやって覚えているんだと思うのね。夏休みの自由研究に成果や評価なんて求めないほうが良いんじゃないかな。好奇心とか、自分で考える楽しみとか、そういった気付きがあることがいちばん大切なんだろうと思うよ。

今日も読んでくれてありがとうございます。たべものラジオは大人の自由研究じゃないかってことを書こうと思っていたんだけど、ここに辿り着く前に長くなっちゃった。自由研究はいつでもやったら良いと思う。夏休みじゃなくても、子供じゃなくてもね。好奇心があって、楽しくやれればね。番組にしちゃうと、あんまり間違ったこと言えないからある程度の成果は求められるけれど、成果よりもその過程が大切なんだよね。あと、こうやって発表して楽しんでもらえる環境があると、それも楽しいんだけどね。いつもぼくの自由研究を聞いてくれてありがとうございます。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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