今日のエッセイ-たろう

仕事のコミュニケーションについて、聞いた話と思ったこと。 2025年6月12日

「商品が欠品しそうなんだけど、発注ってどうなっていますか?」という質問をされた担当者の答えが

「発注したほうが良いと思うけど、良いのかな?」と。ちょっと小耳に挟んだ話なのだけど、ちょっとびっくり。

これは、小売店のはなし。上司は普段から売り場にいるというわけではなく、いろんな事業に関わっていて週に何度かやってくる程度。で、基本的にその会社では社員自らが考えて提案することを求められていて、まだオープンして間もないお店だから仕組みが完成していないから、どんどん提案していかないといけない。冒頭の会話はそうした中でのパートさんから正社員に対する問いかけだそうだ。

パートさんは、家庭の事情で正社員にはなっていないけれど、社会経験豊富なお姉様。じゃあ、上司に電話してみよっか、と優しく提案したそうだ。

なんだか頼りない感じがするんだけど、案外あちこちで見られることらしい。上記の話を聞いた他の人も、「あるある体験」として共感していた。上司に質問するなり確認するなりすれば、すぐに解決できることなのに、自分の中で答えのない問答をしていて結果として保留状態になる。

ともすると、世代間ギャップや個人の資質や能力に原因を求めてしまう。いや、確かに担当者の考え方も少しは変えていかなくちゃいけないとは思うんだけど。そればかりじゃないだろう。なんとなくだけど、社内のコミュニケーションがうまく言っていないんじゃないように思える。悪いわけじゃないけれど、結構好き勝手に話せるほどの距離感にはいない。コミュニケーションっていうのは、シチュエーションとか関係性があってこそ機能するものだと思っているんだけど、その観点でみると日常の関係性が築けていないってことに思える。

あとね。その社員さんはとても優しいのだと思う。想像だけど。例えば、自分自身が他人から指摘されるのがとても苦手だとする。あるよね。ちょっと指摘されるだけでも必要以上に凹んでしまうこと。言ったほうは軽い気持ちで言ったつもりなのに、受け止めるほうが落ち込んでしまうっていうこと。ぼくだってある。

これこそ、「私達は叱られて育てられたのに」とか言って、世代間ギャップに捉えられがちなんだけど。そんなこと無いと思うんだ。というのも、親子の関係がそうだから。我が家の話なんだけど、妻が娘たちに強く叱るのは良いらしくて、その場ではちょっと凹んだり反抗したりするけれど、しばらくすれば回復するんだ。だけど、ぼくが叱るのは怖いらしくて、ちょっとでも強めに言うとズーンと凹んだまましばらく立ち直れない。まだ子どもたちが幼いからってこともあるんだけど、ぼくと娘たちの関係性においては、そうだっていうこと。つまり、個々の関係性によっては強烈な体験として受け止められることがあって、それは当たり前のようにアチコチにある。認めてもらいたいと思っている相手だからこそ、言われると凹むなんてこともあるからね。

で、仮にそういうことにセンシティブな人だったとして。自分が指摘されたときにツライから、他の人にも指摘しない。上司からすれば、指摘してもらいたいのだけれどね。それこそ、現場の「困った」は管理者としては重要な情報で、その情報が届かなくなると組織が崩れてしまう。困ったと言うだけじゃなくて、提案もセット話を持っていくのが良いのだけれど、アイデアがなければ相談すれば良い。それは、嬉しいことであって凹むことではないはずだし、それで叱るような上司は管理者には向いていないと思うんだ。だからまぁ、言って良いんだよという関係性を作ったほうが良いとは思うのだけど。

大した話じゃないんだけど、相手の立場で物事を見るって、結構難しいんだよね。ぼくも気をつけているつもりではいるんだけど、それでも「そうじゃないよ」って言われることも多いし。それこそ、何を大事だと考えているか、優先順位とかバラバラだもの。

だからこそ、なるべく一緒にいる時間を作って、できれば一緒に作業をして、互いの価値観をすり合わせるのが大切なんだろうな。言葉も大事だけど、共有体験とかの言語以外の部分のほうが、後々まで影響しそうな気がする。ある程度の関係性が出来るまで、最初くらいはその時間を持つのが良さそうだ。平たく言っちゃえば、まずめっちゃ仲良くなって、それから時々顔を出したときに「よっ!元気?」「ひっさしぶりじゃないですか。たまには顔出してくださいよ」なんて言い合えるくらいになっていると良いんじゃないかなってことかな。

今日も読んでいただきありがとうございます。ホント、人間関係って面倒くさいよね。面倒くさいんだけど楽しいし、嬉しい。ちょっと思うんだけどさ。だいたいの悩み事って人間関係なんじゃない?で、嬉しいことも人間関係だって気がするのよ。

タグ

考察 (305) 思考 (231) 食文化 (226) 学び (173) 歴史 (124) コミュニケーション (121) 教養 (106) 豊かさ (98) たべものRadio (53) 食事 (39) 観光 (30) 経済 (25) 料理 (24) フードテック (20) 社会 (17) 経営 (17) 人にとって必要なもの (17) 文化 (16) 環境 (16) 遊び (16) 伝統 (15) 食産業 (14) まちづくり (13) 日本文化 (12) 思想 (12) コミュニティ (11) 言葉 (10) たべものラジオ (10) デザイン (10) 美意識 (10) ビジネス (10) 価値観 (9) エコシステム (9) 循環 (8) ガストロノミー (8) 仕組み (8) 組織 (8) 社会構造 (8) 視点 (8) マーケティング (8) 日本料理 (8) 社会課題 (7) 飲食店 (7) 構造 (7) 仕事 (7) 日本らしさ (7) 営業 (7) 妄想 (7) 観察 (6) 食の未来 (6) 組織論 (6) 持続可能性 (6) レシピ (6) 教育 (6) 認識 (6) イベント (6) 多様性 (6) 落語 (5) 変化 (5) 伝える (5) イメージ (5) 未来 (5) 挑戦 (5) 食料問題 (5) スピーチ (5) 構造理解 (5) 解釈 (5) 成長 (5) 体験 (5) 掛川 (5) 働き方 (5) 言語 (4) 自由 (4) 味覚 (4) サービス (4) 文化財 (4) 食のパーソナライゼーション (4) ポッドキャスト (4) エンターテイメント (4) 食糧問題 (4) 盛り付け (4) 作法 (4) バランス (4) 学習 (4) 食料 (4) 表現 (4) 和食 (4) 誤読 (4) 語り部 (4) 食品産業 (4) イノベーション (4) 土壌 (4) 伝承と変遷 (4) 情緒 (4) 世界観 (4) AI (4) フードビジネス (4) 社会変化 (4) 食の価値 (4) 技術 (4) 研究 (3) チームワーク (3) 温暖化 (3) おいしさ (3) 行政 (3) プレゼンテーション (3) 読書 (3) セールス (3) 話し方 (3) マナー (3) 感情 (3) 健康 (3) 効率化 (3) 情報 (3) トーク (3) (3) 民主化 (3) ハレとケ (3) 認知 (3) 会話 (3) 栄養 (3) 自然 (3) チーム (3) 民俗学 (3) 感覚 (3) 変遷 (3) 修行 (3) 慣習 (3) エンタメ (3) ごみ問題 (3) 食品衛生 (3) 産業革命 (3) 変化の時代 (3) メディア (3) 外食産業 (3) 味噌汁 (3) 人文知 (3) 創造性 (3) 代替肉 (3) 伝え方 (3) 料理人 (3) (3) アート (3) 身体性 (3) パーソナライゼーション (3) テクノロジー (3) 魔改造 (3) ルール (3) メタ認知 (2) 料理本 (2) 工夫 (2) フレームワーク (2) 腸内細菌 (2) 笑い (2) (2) 地域 (2) 山林 (2) 芸術 (2) 才能 (2) 婚礼 (2) 夏休み (2) ロングテールニーズ (2) 誕生前夜 (2) 明治維新 (2) ガラパゴス化 (2) (2) 郷土 (2) 料亭 (2) 科学 (2) 共感 (2) AI (2) 水資源 (2) キュレーション (2) 人類学 (2) 外食 (2) SKS (2) 接待 (2) 心理 (2) 飲食業界 (2) 俯瞰 (2) 生物 (2) 旅行 (2) ビジネスモデル (2) SDG's (2) 道具 (2) 生活 (2) 衣食住 (2) 生活文化 (2) 茶の湯 (2) 家庭料理 (2) 思い出 (2) アイデンティティ (2) ガストロノミーツーリズム (2) 身体知 (2) 伝承 (2) 言語化 (2) 儀礼 (2) (2) ビジネススキル (2) (2) 気候 (2) 地域経済 (2) 食料流通 (2) 流通 (2) 農業 (2) 食材 (2) 習慣化 (2) 事業 (2) 報徳 (2) 産業構造 (2) 文化伝承 (2) 食品ロス (2) サスティナブル (2) オフ会 (2) 発想 (2) ビジョン (2) 五感 (2) 産業 (2) サスティナビリティ (2) フードロス (2) 思考実験 (2) 映える (2) 食料保存 (2) 合意形成 (2) SF (2) 電気 (2) 物価 (2) 行動 (2) 常識 (2) 哲学 (1) 江戸 (1) SDGs (1) 補助金 (1) 食のタブー (1) 幸福感 (1) 行事食 (1) 弁当 (1) パラダイムシフト (1) 日本酒 (1) 季節感 (1)
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

-今日のエッセイ-たろう
-,