今日のエッセイ-たろう

興味の偏りとその対象。 2023年3月15日

野球の世界大会であるWBCが大いに盛り上がっている。テレビでは毎日報道されているが、ぼくのスマホニュースアプリではあまり盛り上がっているようには見えない。というのは、ぼく自身のWBCに対する興味が反映されているからだ。

先日、サッカーのときの盛り上がりとの温度差がスゴイと職場でも指摘された。それもそのはずで、ぼくも弟もサッカーのほうに興味が偏っている。ワールドカップのときは、なんとかして試合を見たいということで、調理場にモニターを設置したほどだ。

野球ファンの皆さんには申し訳ないのだけれど、そこまでの熱が無いというのが本音。人間の好みなんてものは、そういうものだろうと思う。

好みという視点もあるだろうけれど、同時に対象の知識も反映されているのかもしれない。今回の野球日本代表選手で知っている名前は限られている。大谷とダルビッシュ、それから栗山監督くらいか。残念ながら、その他の選手については名前を言われてもピンとこないのだ。知らないから興味がわかないのか、それとも興味がないから知らないのか。

スポーツや音楽などは、娯楽の一部である。だから、それぞれに好みがあって、知識の幅があることも問題にならない。しかし、社会課題についてはどうだろうか。興味関心のグラデーションはあるだろうけれど、そのままでも良いのだろうか。どう解釈したものか悩むところだ。

食に関する課題を考えるとき、食文化をテーマにした場合と、食料問題をテーマにした場合では対象となる人が異なる。前者の場合、そもそもグルメに興味のない人はないのだ。極端なことを言ってしまえば、茶懐石が消滅してもさほどの影響はないと考える人だっているかもしれない。そこまでではなくても、普段は食べないし、なにかの機会に食べれば美味しいとは思っても、そこで興味は止まるかもしれない。娯楽としての食文化というのは、そういった人がいてもいいし、そういうものだと思える。

食料問題の場合はどうだろうか。現時点では、日本の食料事情は問題になっていないようにも見える。明日から食べ物に困るということはないだろうし、おそらく来年も同じように食事を取ることが出来ると思っているだろう。現在、食品の価格は上昇し続けている。ぼくのような庶民にとっては、収入も上がらないのに食料の価格があがることは問題になる。しかし、給与水準の高い人にとっては、多少の価格上昇は問題に感じないかもしれない。

あくまでも推測でしか無いのだけれど、もしかしたらこのような興味関心の強さに差異があるかもしれない。ということを、一旦前提において食料問題の認知について考えてみる。

娯楽ではないので、知らなくてもいいよという話ではなさそうに見えている。あまり知られていないかもしれないが、世界の食料生産とその課題は大きくなってきている。日本は大丈夫と考えている人もいるかもしれないけれど、そう遠くない未来に食料危機に直面する可能性があるのだ。

日本の食料自給率の低さは、おそらく多くの日本人の知るところだ。義務教育の中で必ず取り上げられる。だから、国際関係を良好に保つことが重要になっている。という話。

他の国が日本に食料品を輸出するのは、それだけのメリットがあるからだ。日本に売ることで、売り手が儲かる。これが最もシンプルな理由だけれど、そうでなくなったらどうだろうか。かつて、日本は加工貿易で大きな経済発展をしてきた。今でも世界トップクラスではあるけれど、その地位も少々怪しくなりつつある。少しばかり国際順位が下がっても問題なさそうだけれど、そうはいかないだろう。経済的なメリットを享受できなくなれば、輸出国はもっと良い輸出先へと重心を移すかもしれない。

日本人は、割りとお人好しなので、相手国に尽くしていれば恩義を感じて返してくれると思っている節がある。けれども、実際は異なる。国際関係でなく、企業間でもメリットが無くなったら割りとあっさりと関係を切り替えることもある。日本が経済力を失うと、それは食料の輸入にも影響がある。すなわち、食料問題が急浮上することになる。

個人的な予測でしかないのだけれど、全く無いとは言い切れない。他にも食料問題は多岐にわたっているのだが、それを一つ一つここで語ることは割愛する。これらの社会課題に無関心でいることと、スポーツに無関心でいることには大きな差がある。

と、ここまではぼくの個人的な感想だ。これを逆から見たらどうなるだろうか。つまり、スポーツと同じように興味関心がない人が居ても構わない。むしろ、それが自然であるという姿勢だ。

今日も読んでくれてありがとうございます。両面から考えるということは、ものごとの本質を理解するためのアプローチ方法なんだろうな。とぼんやり思っているんだ。ひとりの頭の中だけでこねくり回しても、たどり着かない思考というのはあるんだけど。それでも、いろいろとこねくり回してみると、少しくらいはバイアスを外して状況を把握する助けにはなると思うんだよね。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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