今日のエッセイ-たろう

物価ってなんだろう。どうやって決まるの? 2024年9月4日

お米がない。と話題になっているけれど、実のところそうでもない。米屋に聞けばすぐにわかる。種類は少ないけれど、あるにはある。そりゃそうだ。だいたい、昨年の収量を考えれば一昨年より少し多いくらい。特定の商品が少ないというだけで、米全体が無いわけじゃないのだろう。

ものが無い、となると物価が上がる。需要があるのに供給が少ないと物価が上がるのは基本的な仕組み。需要が上がって物価が上がるのはディマンド・プル・インフレと言うらしい。同じインフレでも、原材料の価格が上がったことが原因で発生するのはコスト・プッシュ・インフレ。

先ごろ、米農家が消費者に「高すぎる」と言われたという投稿を見かけた。需要と供給のバランスによって生じたインフレとも言えなくはないのだけど、実情は違うのだという。肥料代も高くなっているし、耕作機械の燃料コストも上がっている。農家というのは、そのほとんどが家であって、企業じゃない。だから、農家が生活するためのコストが上がれば、それもなんとかしなくちゃいけない。コスト・プッシュ・インフレなんだね。つまり、価格をあげなければいけない事情があるということだ。

一方で、「高すぎる」と言った消費者の目には、ディマンド・プル・インフレに見えたのかもしれない。不足しているのを良いことに値上げした。足元を見やがって。という気持ちがあったのだろうか。

インフレという一つの言葉だけれど、パターンが違う。理解が違うとすれ違いが起きる。のである。相手の立場を理解するっていうのは、こういうことを乗り越えるために有るような気がする。

足元を見やがって。と書いたけれど、これはけっこう問題のある感覚だと思う。需給バランスが物価の変動に影響するというのは、現在の経済の仕組みだと思うのだけれど、不当に利益を得ているようなイメージがついている。みんなが欲しがるもので、希少性が高ければ価格は高いもの。それは、かつての砂糖がそうだったように自然なことと言える。

値付けは経営。と言われるのは、「お客様が納得して購入していただける最も高い値付けを行う」ことが是とされるからだ。それだけの価値があるのだから、価値の対価を得るのは正当なこと。正当に受け取ったお金を、また正当に使っていく。この理念は稲盛和夫氏が語っていたことである。案外、浸透しなかったのかもしれない。

価格改定は、けっこう大変だ。経営的な判断も有るし、そもそも変更すること自体にコストがかかる。会社の利益構造を考え直さなくちゃいけないし、客数の変動も考え直しだ。各商品の表示価格を変えるのだって手間がかかるし、消費者に受け入れられるようになるまで時間もかかる。もしかしたら、もとに戻すべきときが来るかもしれない。原材料が高い状態が数ヶ月で収まるのであれば、その間だけ利益率が低い状態で我慢しようと考える。つまり、社会のコストアップを誰かが吸収しているわけだ。

加えて、世の中には平均というものがある。似たような商品で、他に安く販売している所があればそちらで購入する。社会全体が価格を変えなければ、一社だけが価格を上げても、売れる数が減るだけで利益改善には至らない。風潮というか、目に見えない圧で決まる部分もあるわけだ。

こういうのがいくつも重なって「業界単位」で利益率が定まってしまう。たまに別の業界の見積書を見ることが有るのだけれど、利益構造の違いに驚くことが有る。飲食業のヒトに支払われるコストはかなり低いのだけれど、それは商品つまり結果に対して対価をもらうモデルだからだと思う。修理などで業者を呼ぶと。結果にかかわらず出張コストがかかる。スキルも関係なく、出動するだけでコストがかかるのだ。どちらが良いという話ではないが、モデルが違っていて、その状態を当たり前だと認識しているというのが実情だ。

今日も読んでいただきありがとうございます。料亭って、一人あたりの食事代が高いんだよね。ラーメン屋だったら家族全員分に匹敵することもあるもの。だからといって、その分利益が高いわけじゃないんだ。その分コストが掛かっていて、回転も悪いものだから利益率は良くないんだ。会社のことも有るし、たべものラジオの勉強にも必要なので、少しずつ物価についても勉強している。ということで書いてみた。

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武藤 太郎

1988年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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