今日のエッセイ-たろう

「使いこなす」というスキル。 2024年9月3日

先日友人と話していて、AIの話になった。複雑な話じゃなくて、ChatGPTに代表されるような生成AIをどう使うか。使い方を知りたいという人がいるので講習会をやるという。面白そうだ。会話の中でちょっと思ったのは、そもそも検索の仕方がよくわかっていないのでは?という問いだった。

音声、動画を問わずナレッジ系の番組は、書籍から得られる情報以外にネット検索も駆使している。なんとなく聞き流してしまうところだけれど、実に的確に知りたい情報にたどり着くものだと感心する。どんなキーワードで検索すればよいのか。補強する情報をどの程度収集すれば確度が上がるのか。など、それぞれにノウハウがあるような気がする。

直感的に連続して調べているので、具体的な手順を思い出せと言われてもなかなか難しい。そんなだから、抽象化するなんてことはもっと難しい、と思っている。いずれ整理できたらしてみたいところではあるな。

似ているのは、図書館にいる司書。こんなことを知りたいんだけど、どんな書籍を読んだら良い?どんな道筋で調査をすればいいかアドバイスしてもらいたい。などといったことに答えてくれる。つまり、情報の使い方について教えてくれるわけだ。

多くのものがそうであるように、操作方法だけでなく活用方法を知ることがポイントになるのだろう。

最近では、オリンピックサッカーで話題になったオフサイド判定。たしかに片足がほんの少しだけラインを超えていた。そういう意味ではオフサイドなのだけれど、オフサイドというルールの主旨に則れば、あの状況をオフサイドと認定しないというのが大方の認識らしい。この判定で有利になったチームですら、そう言っているくらいだ。AIで知り得た情報を、使用者がどのように判断して活用するか、という事例のひとつと言ってもよいのじゃないだろうか。

例えばルールでは、そのルールがなんのために存在しているのか、を理解することが必要なのだろう。それが判断の基準の一つになるから。こういってしまうと大仰だけれど、なにか本質的なものがわかっていれば、ルールは少なくて良いのかもしれない。

一方で、そうも言っていられない状況も有る。現代社会においては、自動車は社会のインフラとして重要だ。都会にいると気が付かない人もいるだろうけれど、田舎に行けば行くほどこの傾向は強くなる。そういう社会の仕組みになっている。車を持っていない、運転できない、というのは社会的にかなり不利な状況になる。だから、なんとかして運転免許を取得しなければならないし、社会としても取得してもらわなければならない。

この前提があると、運転免許を取得させなければならない、という全体意思が働く。かといって、かつての交通戦争のように事故が多発するようでは困る。そこで、本質なんてものを理解していなくても、適切なルールを丸暗記して確実に守ってもらう、という方法が選択される。

意地が悪い。ひっかけ。などと言われる筆記試験は、そうした経緯で登場したのかもしれない。丸暗記をして、そこから外れていることに気がつくこと。そこから、ルールの本質を類推する人が現れること。あくまでも想像だけれど、そうせざるを得なかったのかもしれないと思う。

「本質を理解して活用する」ということを、すべての人が行うのは難しい。というのが前提にあるんだろうな。有能かどうかじゃなくて、この仕組みに適しているかどうかっていう意味でさ。そうなると、前半の話に戻って、リサーチをする人というのは「労力の代行」ではなく「スキルの提供」になるんだよね。誰でもできることじゃないから、得意な人がやる。で、それをわかりやすく要約して伝えていく。AIが発達したからと言って、いますぐ全てが代替されることがないのは、この部分にあるんじゃないかという気がしてきた。

今日も読んでいただきありがとうございます。使う、って実はそれなりに知識や習熟が必要なんだろうね。調理器具、情報、お金、テクノロジー。歴史だって、ただ知っているだけじゃ意味がない。いま、ぼくの背後に飾ってある色紙には「歴史を学び、歴史に学ぶ」と書いてある。歴史学者小和田哲男さんの言葉だ。そういうことなんだろうな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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