「見つめ合って会話する」ことを、日本ではどう解釈されてきたのか。 2023年10月14日

日本人は会話中に目を合わせないと言われる。全てではないだろうけれど、その傾向が強いのだとか。そりゃそうだろう。日本人にとって、じっと目を見つめ合うという行為は、特別なことなんだから。

ちょっと前の日本人だったら、人前でキスをするなんてことはもちろん、手を繋いで歩くというだけでも敬遠するような行為だと感じていた。当たり前のようにハグをする文化が日本にやってきたとき、初めてそれを見た人たちはどのように感じたのだろう。握手ですら、不思議な慣習に見えた時代のことだ。きっと、当時の人達にとって、とても奇妙な行動に映ったことだろう。

目をじっと見つめ合う。これは、日本では目を交わすと言う。目交わうと通じている表現だという。まぐあう、というのはそのままの表現だが、性行為のことである。まぐあいという言葉を聞いたことがあるだろう。じっと目を合わせるというのは、異性に対して興味を持っていることを感じ合う行為。

人によってどのように感じ取るかはさておき、もうかれこれ千年以上このスタイルで美意識を共有してきたのが日本文化だということは知っておいても良い。ハグですら抵抗を感じる文化において、目を見つめ合うなどというのは、もっと距離感が近いことなのだ。ハグよりも目を合わせるほうがライトだと感じてしまうけれど、そうでもない。ということは、古い時代の和歌を読むとわかってくる。

和歌にしてもそうだけれど、人と人との物理的な距離よりも心の距離を重視する傾向にある。とも読み取れるだろう。どれだけ、心が通じ合えるかを中心においた恋の歌が多いように思えるのだけれど、バイアスがかかっているのだろうか。

ぼくらは意識しなくても、千年以上続いてきた文化に支配されている。美意識と表現したほうがしっくりくる。なにを見てどう感じるか。どんな風情や心の動きを美しいと感じるのか。本居宣長の言うように、「あぁ」とか「あれ」と感嘆する「あはれ」ポイントを共有してきたわけだ。

長きに渡って共有してきたものを、「さぁ変えてください」と言われても困る。技術としてそれを行うことは容易い。そりゃ、目を見ていればいいだけのことなのだから。近視の人なんかだと、メガネを外してしまえばじっと見られていることすらわからないのだから、それも技術だ。ただ、心の動きまではどうにもならない。

しょうがないじゃないか。どれだけ西洋諸国が麦文化に書き換えようとしても、米文化が圧倒的に強くて変わらなかったんだ。今日から箸は禁止するので、ナイフとフォークとスプーンだけで食事をしてください。そんなことを言われても困る。文化や価値観が違うのは仕方ないのであって、そのことに良し悪しなどない、と思うんだ。

東京の朝の通勤ラッシュは、もはや東京名物となっている。あれだけの混雑でありながら、ほとんど喧嘩も起きないし、怒声を聞くこともない。週末の渋谷のスクランブル交差点では、いったいどうやっているんだろうと首を傾げるほどにぶつからない。外国人は驚くし、田舎暮らしの僕らもそう思うところはあるのだけれど、たいていの日本人はスクランブル交差点くらいの混雑で、何度もぶつかってしまうということはない。

とにかく周囲に気を使っていて、そのために観察眼が研ぎ澄まされている。仕事は真面目で、どうしても手を抜けない。100個の商品を作ったら、その中にひとつでもバグを出さないように神経をすり減らす。業務終了時刻間際でも、困っている人が窓口にやってきたら受け付けてしまう。

外国人からみて「日本人って変わっている」と言われるポイントである。

そうじゃないんだよね。全部「良いこと」なんだ。一生懸命に丁寧に真面目に頑張るのは「変」なんじゃなくて、「美しい」ことなんだよね。仕事は不真面目で手を抜く人がいるのが普通って、「変」でしょう。

今日も読んでくれてありがとうございます。文化とか価値観というのは、自分だけでは変えられない部分があると思うんだ。今回はわかりやすく外国人を比較対象にしたけれど、日本人同士だって違いがあるんだもの。美意識だって共有している部分が完全に重なり合うわけじゃない。そういう違いを、個人だけのことにしてしまわないでいること。そして、大きな流れとして受容していくこと。っていうのが自然なんじゃないかな。

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