今日のエッセイ-たろう

自分で作り出した環境に振り回されているい? 2024年1月22日

今年のフグはどうだい?毎年どこかしらで聞くセリフだ。お客様に言われることもあるし、同業者から言われることもある。そういうぼくだって、魚屋さんや漁師さんに言うことがある。フグに限らず、お茶のシーズンには同じような会話が展開されるし、他の野菜だって同様。きっと、今も昔も同じ会話がされていただろう。

毎年同じことが繰り返されているような気分になっているけれど、そんなことはない。必ず、ちょっとずつ違うのだ。そんなことを、改めて感じさせられる。

ずっとずっと古い時代。税がお金じゃなかった頃は、各地の特産品が都へと送られた。衣服や建築材、燃料などもあるけれど、食品が多く見られる。それは、もしかしたら、国を治めるために各地の状況を知る手段だったのかもしれない。確証はないけれど、そんな気もしている。

環境が変わると、ぼくらの生活は大きく変わる。長い時間軸であれば、寒冷化や温暖化、地形の変化が起きている。その度に、人類は生活そのものを変化させて対応してきたのだ。

そもそも、生物は環境変化に対応することを宿命付けられている。対応の仕方が、それぞれに違うだけ。大まかに、2つに分類されるらしい。ひとつは、遺伝子によるもの。もうひとつは、知恵によるもの。

寿命の短い種は、頻繁に代替わりをすることで体そのものを変化させて環境に対応する。人間などの寿命が長い種は、過去の記憶をもとに生活習慣を変化させることで対応するから、知恵を用いた環境適応タイプ。動物が移動するのも同じ理由らしい。これらに該当しないように見えるのは、その種にとって重要なほどの環境変化ではないのだという。詳しいことはよくわからないけれど、そういうことらしい。

時代によっては、平野に集落を作ることもあれば山地に居を構えることもある。住居だけでなく、暑ければ薄着になるし、寒ければ重ね着をしたり毛皮のようなものを着たりする。もちろん、食べ物だって環境によって変化する。食料が豊富に取れるときと、そうでない時では異なる食生活になる。獲得できるものを食べる。というのが、動物的な基本姿勢なのだろう。

ある時、人類はこのスタイルから脱却することを目指し始めた。環境に適応するのではなくて、自分たちに都合の良い環境を作り出すこと。そんなふうに見える。暑ければ生活空間を冷やすし、寒ければ温める。麦が採れないとか、米が取れないとなれば、それらを遠くから集める。あるもので対応するということから脱却して、なければ作り出すという姿勢。

その結果、科学は進展して、ついには生活環境を人間に合わせることに成功した。もちろん、地球環境そのものをいじることは出来ないけれど、生活空間を整えることだけは成功した。だから、ぼくらは快適に生活することが出来るようになったのだ。

快適になった結果、人口が増えた。増えた人口で、同じように快適な生活環境を整えるようになったら、規模が大きくなって、地球環境にまで影響を及ぼすようになった。そして、自らが変えてしまった環境に対応せざるを得ない。というのが、現在なのだろう。そんなふうに捉えられるのではないだろうか。

異なる環境で何世代も過ごすことで、多くの動物は進化して別種になっていった。現代の人類はもう数百年前の人類とは別の生き物のになっているような気持ちになってくる。知恵で対応するタイプの種であるのだから、科学や人文知識を駆使して柔軟に対応するしかないのだろう。地球が温暖化して、あらゆる環境が変化しても快適に生存できるようになること。これを遺伝子レベルで対応するには、かなりの時が必要だもの。

今日も読んでくれてありがとうございます。サッカロマイセス・セレビシエもアスペルギルス・オリゼーも、糖からアルコールを生成するんだけど、アルコールに弱いんだよね。一定の濃度を超えると、自分が作り出した環境で生きていけない。ホモ・サピエンスはそんなことにはならないようにしたい。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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