今日のエッセイ-たろう

飲食店は、食に関するメディアのひとつ。 2023年8月21日

昔々、飛鳥時代から奈良時代の税制に租庸調というのがあった。租は米、庸は労働か布など、調は布や特産物が対象だったかな。これ、「しろしめすくに」に通じているんじゃないかと思うんだ。しrしめすっていうのは、天皇が治めるという意味でもあるんだけど、元々は「お知りになる」ということ。つまり、国の状態を知ることが統治の基本だということなんだろうね。

租庸調は税でもあるけれど、同時に諸国の米や特産物を食べて、いま農業がどんな状態なのかを知る。労働の状態によって、人々がどんな状態なのかを知る。で、今年はどこそこの米が美味しくないとか、漬物が美味しいとか言って、食や産品を介して諸国の状況を把握していたのかも知れない。どうも、そんな気がするんだ。

人は、人の生活や自然環境を直接知るだけじゃなくて、様々な物品などを媒介にして知ることが出来る。

そういう意味で、外食産業というのはある種のメディアの役割を果たしているんだと思っている。

鰻屋さんは、うなぎだけを取り扱う専門店だ。食べてみて、店主の話を聞いてみれば、今年のうなぎがどうなのかがわかる。原価が上がって、商売が大変だという話から、養殖場のコストまでを想像することが出来る。日本料理店でも居酒屋でも、カツオの値段が上がったとか、今年は良いとか、そんな話につながるかもしれない。

土地柄、春から初夏にかけてはお茶の話題がそこかしこで聞かれる。今年のお茶はどうだ。出来はいいけれど、価格がおいつかない。一番はいまいちだったけど、二番が状態が良い。そんな話だ。すると、大抵は気候の話になる。霧が多かったとか、暑くなるのが早かったとか、変なタイミングで暑くなった日があったとか、ね。

もちろん、これは家庭でも知ることは出来る。ただ、飲食店は単純に取り扱う量も種類も多いから、よりわかりやすい。仕入れ状況は、ダイレクトに料理にも反映されるし、経営に響くから。ちょっと意識をそちらに向けるだけで、わかりやすいんじゃないかと思うんだ。温暖化や原油価格の高騰が、食を通して感じられるという意味で、しろしめす状態になる。なにしろ、国家の主権は我々民衆にある。というと大げさかもしれないけれど、そういう社会なのだから。

もうひとつ、メディアの役割がある。食の楽しみ方だ。もっとシンプルに言えばレシピということになるかな。こんな食べ方があるなんて知らなかった。これはなんだろう、初めて食べるものだ。家で作るよりも美味しいのはなんでだろう。そんな感想を抱くことがあるかもしれない。それは、調理を生業にしているからこそ蓄積された知見があるからだろうね。

本などで学ぶことも大切なんだけど、みんながみんな出来るわけじゃない。大変だしね。それに、本で読んでもよくわからないってこともある。会席料理みたいに、コースだと献立の詳細までお客様が指定することはないよね。だから、知らない料理を勝手に作って、それが提供される。そうすると、なんだかわからないものにチャレンジする機会が生まれる。これが大事なんじゃないかな。

ぼくらは、全てのジャンルに関して詳しくなることは難しい。ひとりひとり、出来ることと出来ないことがあって、知っていることと知らないことがある。で、食に関しては食に詳しい人から情報を提供してもらうのが良い。専門分野の人というのは、どのジャンルでもそうだけど、ただ知っているというだけじゃないからね。たくさん知っていて、実践していると、良質転換がおきて知恵をもっている状態になる。

今日も読んでくれてありがとうございます。食べることで、五感で知る事ができるのはわかりやすいと思うんだ。食に無関係な人はいないからね。誰でも一家言あるくらいの知見がある。だからこそ、わかることも多いだろうし。特に、日本人はグルメな文化だと言われているから、敏感なのかもね。ただ、自然や社会が反映されにくい外食も存在しているから、そればかりに接していると世間が見えなくなっちゃうかもね。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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