今日のエッセイ-たろう

SGSフォーラム奈良で登壇してきました。2022年11月27日

少し前に、とあるフォーラムにお呼びいただいた。「SGSフォーラム奈良」である。SGSというのは、「Sustinable Gastronomy in Society」の略で「社会の中で持続可能なガストロノミー」というような意味だ。主催者は、日本とヨーロッパの間で連携するフォーラムを推進している。難しいよね。

国際社会の中で、ちゃんと対話して食に関連する良い仕組みを見出していこうね、ということだ。例えば、GI。Geographical Indicationの略なんだけど、地理的表示保護制度と訳される。有名なところで言えば、フランスのシャンパン。勝手にシャンパンを名乗ることは出来ないし、名乗るためにはそれなりの条件がある。ということを国で保護しているんだ。そして、シャンパンというものの価値を維持するために、品質管理を組織だって行っている。もちろん、似たようなネーミングで消費者に誤解を招くようなことも無いように徹底している。

世界的にも日本国内でも、ちょこちょこと問題になっているんだよね。知らないうちに売れそうな名前を海外で勝手に使われているなんてこともある。日本では有名だけれどヨーロッパでは知られていない地域の名産品があるとするじゃない。そうすると、他の国が日本の地域名を冠した商品を先にヨーロッパで展開しちゃうわけ。日本産じゃないのに。最近だと愛知県の西尾の抹茶がやられたよね。中身は全部韓国産なのに。他にも、商品がないのに商標登録だけしてあるケースもあるんだそうだ。名称を勝手に使えないようにしている。正しく静岡茶なのに、その国では静岡茶という名称を使用することが出来ないなんてことが発生する。こういった不正から守りましょうってことなんだけど、登録は国ごとに行われるから国際的な協調が必要なんだよね。

GIの話は、SGSの取り組みの一例ね。他にも、持続可能な食料生産だったり、加工や販売サービスだったり、消費や健康だったりも同様に取り扱われる。食品ロスもね。

国際的に対話する場を設けることで、相互に良い関係と仕組みを構築しましょうってことだ。必要に応じて、政策提言を行っていくのだ。

こういった取り組みの一環として、各地でフォーラムを開催していく。その第1回目が奈良県で開催されたわけで、そこにたべものラジオを呼んでいただいたわけだ。良いのか、ぼくらで。という気もしなくもない。だって、ぼくらの出番は「クロージングセッション」だったんだよ。つまり、トリ。

ぼくらの出番までは、とても緊張感あふれるしっかりしたセッション。対談形式だったり、プレゼン形式だったり。現場の生産者や、料理人、学術的な研究者、省庁の担当者などが登壇した。GIについては、国の担当者が現場で構築している仕組みや、国際的な調整ごとのリアルをお話いただいた。奈良の食文化や、万葉集に登場する食材について、大学の研究から発表していただいた。

そんな雰囲気の中、たべものラジオはいつもどおり。いつものようにBGMを流して、いつものようにオープニングトークをしてという流れだ。雰囲気は全然違うよね。一部の人達は、始まった瞬間に固まったらしいよ。ニヤニヤ笑っているのはリスナーさんだけだ。あぁ、こんなところでもリスナーさんが居てくれるんだなって心強い。

さて、今回はぼくらが一方的に喋ることはしなかった。なにしろ、与えられた役割は「モデレーター」なのだ。直訳すれば「仲介者」とか「調停者」になるんだけど、まぁ場を仕切る人だよね。話題を提案したり、質問を振ったり。テレビ番組の情報バラエティで司会してる人いるじゃない。いろんなコメンテーターに話を振るの。テレビの場合は基本情報はVTRで紹介されるけれど、セッションの場合はその場で引き出すというのが大きな違いだろうか。

会場にいらしたリスナーさんからは、新鮮だったという感想があった。たしかに、珍しいよね。普段ポッドキャストから流れる音声は、ぼくらがメインスピーカー。ぼくらが思ったことを話すわけだ。今回は、それよりも引き出す側に回っていたからね。

さすがに7人は多かったかなあ。45分でしっかり引き出すのなら、もう少し人数を絞ったほうが深掘り出来たんだけどね。でもまぁ、先方が紹介したい人があってのことだからしょうがない。いつものノリではあるけれど、なんとか時間内に全員の特徴的な部分だけは引き出せたかな。で、7人分の話を包括するという。無茶だったかな。でもまぁ、最終的には主催の方が喜んでくださったし良かった。理事の一人は、始まった瞬間に「終わった」と思ったらしいよ。誰だよこんなの呼んだ人って。でも、終わった直後には「あのトーンから、まさかこんなに深い話に繋がるとは」って言ってくれて。無事役目は果たせたかな。

長かった一日だけど、これはこれで面白かったし学びも多かった。これからも、こういう活動が広がっていくと良いよね。ぼくらは、少しでも活動が伝わるように広報活動をしますかね。

そうそう「奈良に美味いものなし」って言われているんだってさ。誰が言っているのか知らないけれど、奈良の人たちにとってはコンプレックスになるほどに言われる言葉らしいのよ。ぼくははじめて聞いたけどね。そもそも、日本文化の発祥の地だし。奈良から始まった食文化だってひとつやふたつじゃない。もっと、自身持って良いんじゃないかな。いま、洋食を軸にガストロノミー立国をしようとしているらしいのね。それはそれで良いのだけれど、もう少し奈良のアイデンティティを見直しても良いのじゃないだろうか。もったいない。他の地域は逆立ちしたって出来ないんだよ。京都より伝統があるなんて、そうそうあるもんじゃない。日本の食文化において、京都に対してマウントポジションをとれる地域なんてさ。

今日も読んでくれてありがとうございます。特にこれといった話ではなくて、忘れないうちに感想を書き出してみただけよ。ガストロノミーってなんだろうって話は、また今度整理しようかな。めちゃくちゃ乱暴に言っちゃうと、たべものラジオみたいなことがガストロノミーなんだけど。それはそれで語弊があるか。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ留学。帰国後東京にて携帯電話などモバイル通信のセールスに従事。2014年、家業である掛茶料理むとうへ入社。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務め、食を通じて社会や歴史を紐解き食の未来を考えるヒントを提示している。2021年、同社代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなど、食だけでなく観光事業にも積極的に関わっている

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