今日のエッセイ-たろう

ポッドキャストで広がるコミュニティ 2022年7月31日

たべものラジオを始めてから、新しく世界が広がったのがよく分かる。間違いなく広がった。今まで通りの生活をしていたら一生関わることのなかった人と出会うことが出来るようになったからね。実際に直接お会いした方もいるし、Twitterや公式サイトのメッセージ、アプリのコメントなど、非接触で接触している方もいる。なんだか、とても面白いし嬉しい。このエッセイだって、読んでくれる人がいるとしたらほとんどの人はリスナーさんだろうと思うのだ。

こんな、どうでも良いことをダラダラと書いているだけのエッセイを読んでくれる人がいるのかな。誰も読んでいないだろう。ぼくが後で読み返して面白いと思えることを書けば良い。と思って書いているのだから、読み手のことは少しだけ意識する程度にとどめている。というのは、まぁどうでも良い話。

コミュニティというか、人との関わり方に複数の軸があるのはとても良いなと思う。縦方向だけじゃなくて、横や斜めのグルーピングがある。短い言葉にまとめるのが難しいな。ちょっと書き出してみようか。

社会の中では、ある一定のヒエラルキーのような構造があると思っている。少々居心地が悪いのだけど。金銭的資産の多さだったり、知性の高さだったり、人脈の広さだったり、多かったり高かったりするほうが上位という概念が存在しているようなきがするのだ。上位の側は、そのカテゴリにおいては下位の人に対して優越感を抱く。最上位の人たちは、当然少数派だろうけれど、その少数派の人達同士で妙な仲間意識が生まれる。帰属意識みたいなものだろうか。

もちろん、現代においてはかつての封建社会のようなヒエラルキーが顕在化しているわけじゃない。だけど、見えないだけであるにはある。で、これを壊そうという力学も同時に働いている。そんなふうに見えちゃっているんだけど、実際のところはどうなのだろう。これは意見が分かれるというか、いろいろ言われそうだな。まぁ、いいけど。

とりあえず、そういうことがあるとして、だ。壊そうとすると、それはそれで面倒なことになる。いろんな活動をしている人たちの情熱と労力には感心するのだけど、自分でやろうという気にはならない。まちづくりはするけれど、ヒエラルキーの破壊に対しては興味が無いのだ。

ぼくが思いついたことは「釣りバカ日誌」である。

何年か前までは、お正月の映画といえば釣りバカ日誌。その前は寅さん。定番の映画だから、知っている人も多いと思っているのだけど、20代以下にはわからないか。大企業である鈴木建設に努めているボンクラ平社員のハマちゃんと、その大企業の社長であるスーさんのドタバタドラマ。今日の話で最も興味を引かれるのは、この二人の繋がり方なのだ。

サラリーマンとしてのハマちゃんは、一介のしがない平社員だ。仕事が特に優秀だということもなく、むしろ足手まといくらいに思われている。企業の中では最下層。これに対して、鈴木建設の鈴木社長はトップ。年齢だって親子ほどに離れている。まさにヒエラルキーの両端だ。

ところが、釣りというカテゴリーでは全く逆転する。ハマちゃんが師匠。スーさんは弟子。全くしょうがねぇ爺さんだな。そんなんじゃお魚さんも寄ってこないよ。貸してみな。と言った具合だ。

ハマちゃんとスーさんは、同じ空間にいながら違うコミュニティに同時に属している。これが、ヒエラルキーのバランスを取ることに繋がるのじゃないかと思うのだ。

思えば、小学生の頃。勉強が得意な子は、その得意を生かして苦手な子に勉強を教える。賢い子は運動が苦手だけど、勉強はからっきしだけど運動が得意だってこともある。それぞれに、いがみ合うんじゃなくて、いい具合に助け合えるという関係で、その時々で手を貸す人が入れ替わる。

落語の世界にも同じような情景が描かれている。おれはおつむのほうはからっきしだが、体力にはちいっとばかり自身があるんで。ご隠居、なんでも言ってください。そうかい、熊さんは頼もしいね。じゃあ、ひとつ頼もうかね。八っつぁん、熊さん一人じゃちょいとばかり血の気が多くていけない。お前さん、一緒に行ってうまいことあちらさんと話をまとめてくれないかい。よしきた。とまぁ、それぞれの得意分野で活躍するのだ。彼らは下町の長屋というコミュニティに属しているのだけど、それと同時に町の若衆という青年部だったり、大工という職業コミュニティだったりにも同時に属している。

得意分野ではヒエラルキーが逆転する。ヒエラルキーがなくてフラットなコミュニティもある。それぞれのコミュニティのなかで緩やかな繋がりを持っている。

仲間意識というのは、誰にでもある。何か仕事を頼んだり、相談をするのなら見ず知らずの他人よりも、気心の知れた友人の方が良い。信頼の度合いが違うし、色々と説明をしなくても理解している事柄も多い。そもそも他の人を探すのも大変なのだ。あの人なら詳しそうだから、ちょっと聞いてみよう。というくらいのことなら、わざわざ他人を探すまでもない。そういう感覚があるだろう。

複数のコミュニティで様々な繋がりがある。というのが、良い。一つのだけのコミュニティに依存しすぎない感覚。これが、いわゆる勝ち組負け組みたいな切り分けしか無いと恐ろしいことになりはしないか。勝手に上位だと思いこんでいる人たちだけで、融通関係を築くことにならないだろうか。いや、既にそうなっているコミュニティを見かけることもある。

話がだいぶ逸れてしまったな。ポッドキャストを通じて、同じ事柄に興味関心がある人達で繋がる。ポッドキャストをやっている人同士で繋がる。今までの繋がりもある。そういうのが緩やかに大きく広がっているって、なんだか良いなあと思うんだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。スーさんは大社長。表立ってハマちゃんを養護するようなことは難しいけれど、なにかと社員としてのハマちゃんを気にかける。というのが、ドラマのあちこちにある。これを一刀両断するのか、それとも、複層的関係があって良いとするのか。ぼくならば後者だな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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