今日のエッセイ-たろう

中学校での講話と、「学び」について思うこと。2022年10月1日

先日、地元の中学校へ行ってきた。講師として話をしてきたわけだけれど、職業講話というやつだ。地元の社会人を呼んで、中学生に「働くとはどういうことか」「大人たちとの接点」などをテーマにした取り組み。大したことを話したわけじゃないんだよね。普段何をやっているのかだったり、どんな考え方をしているのかだったりを話すだけ。物怖じをしない中学生を相手にキャッキャと喋るだけのことだ。

授業という形態を取っている以上は仕方がないのだろうけれど、少し考え直したほうが良いかなあと思ったことがある。というか、毎度同じことを思うのだ。ひとつは、「お礼」や「感想」を書くということ。

聞いたことを自分なりにまとめたり、そこから感じたことを「書く」という行為は良いと思う。書くことによって、自分でも思っていなかったような思考が働くこともあるし、インプットした情報を整理することにも役立つ。それは、日々ぼく自身が感じていることだ。

ただ、それを人に見せようとか、講師へのお礼に「しなくちゃいけない」と設定してしまうことは、もう少し考え直してみたいと思うんだよね。なんとなく、見せようという意識が働くと、ちょっと良いこと書きたくなっちゃう。「お礼」だと言われると、取り敢えずは「ありがとう」がテーマになるからね。「ありがとう」と言うための論拠を探し出すことになる。そういうバイアスが働くんじゃないかと思うんだよ。

生徒ひとりひとりが感じることはバラバラだ。面白いと思うポイントも違う。それは、人生経験が少ないからこそ、より違いが大きいような気もする。だからこそ、素直に思ったことを書けば良い。面白いと思うポイントがなかったのなら、そのまま書いたら良いと思うんだよね。響かなかったのなら、それがなぜなのかを考えることの方が大切だ。

講師の人生観に共感できないとか、尊敬する他の人と乖離が大きいとか、現在描いている理想の未来と違うとか、なんでも良い。そういうのも含めて他の友人と話してみる。そしたら、中には反対の感想を持っている人もいるかもしれないじゃん。じゃあ、何が違ったのか。自分と友人とで感じ取ったものをシェアし合う。経験が足りなかったのか、視点が違うのか。そうして「そういう視点もあるんだなあ」という程度の感想を抱けば良い。いくつかの感想の中で、自分が良いと判断したものだけ拾い出して、理解できるように勉強するだけのことだ。

例えば学校の授業で美術館に行ったとする。まぁ、日本ではあんまり無いのだろうけれど。まぁ、行ったとするよね。そうすると、必ず感想文を書かせるということが発生するでしょう。せっかくいい気分になっていたのに、感想文を書かなくちゃいけないというプレッシャーが美術鑑賞をつまらないものに変えてしまうこともある。恋人と映画館に行ってとても良い気分になる。その後カフェで感想を喋るのは楽しいのだけれど、文章にまとめなくちゃいけないとなると、途端に窮屈になってしまいそうなんだよね。

「つまらなくなる」と「書くことによる学びの発見」のバランスがとてもむずかしいんだろうなあ。学習率という概念があるよね。経験値を10としたら、そのうちどれだけ自分自身の学びに変換することが出来るのかという割合。学習率を向上するためにはどのような「フォーマット」を用意したら良いのか。つまるところ「教育」とか「学校」というのは、そのフォーマットを用意するための箱なのだろう。

もちろん、ひとりひとり違うんだろうけどね。

そうそう、最後に一言メッセージをって言われたので、ずっとラジオのようなテイストで話していた分、真面目に喋ってみた。備忘録ついでに書き出しておこうかな。

現代社会では、時間を分断して考える傾向が強い。小学校、中学校、高校、社会人。もっと大きな括りで言えば、江戸時代、明治時代とか。その度に、違うストーリーが始まっているように感じているかもしれないけれど、全く違う。全ては地続きの一つの大きな物語だ。そのせいか、勉強は高校や大学で完了してしまって、その間に積み上げたものを使って社会を渡っていくような感覚になっている人が多い。そんなわけないんだ。学びは一生続く。そのために必要な基礎教養、基礎体力を作るのが学生。おとなになっても出来るけれど、基礎は早めの方がいい。それだけのことなんだ。

一生分の食事を20年で済ませてしまって、そのあとは食事をしないなんてことはないでしょう。朝ごはんを食べてもお昼くらいにはお腹が空くんだ。まとめて食べるんじゃなくて、少しずつ代謝しながら体を作っていくんだよね。同じ様に「学び」ってのはは、人生を豊かにする「食べ物」なんだ。今は基本的な「学びの食べ方」を訓練している感じかな。食材を探し出して、調理して、食べる。このステップだね。

これさえわかっていれば、いわゆる「お勉強」だけじゃなくたくさんの出来事からも「自分なりの学び」を獲得することは出来るから。

これさえ出来れば、いつでもどんなモノゴトからでも学びを増やすことが出来るから。そしたら、いつでもリスタート出来るんじゃないかな。なんでもはじめられる。なんでも出来る。やってみて、その中から打ち込めるような情熱の湧くものを見つけたら良いんじゃないかな。ぼくは、そんなつもりで生きているよ。

今日も読んでくれてありがとうございます。おっさんになったよなあ。どうも、最後に教訓じみたことを言ってしまった。まぁ、たぶん今、自分自身に言い聞かせたい言葉なんだろうな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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