今日のエッセイ-たろう

観光産業と地域経済の需給バランス。2023年9月6日

需要と供給。このバランスが大事だよねって言うことは、中学生くらいでも学校の授業で習うんじゃないかな。おぼろげな記憶だけれど、学校で習った気がする。

最近連続で観光のことを書いているのだけれど、今日もその話になりそうだ。

地方都市で、商売が苦しいということは、シンプルに需要と供給のバランスが悪いと考えてみても良いかも知れない。魅力があるかどうかではなくてさ。魅力を感じていて、そのためにお金を払おうという人の人数と、それを提供する事業者の数がマッチしていない。ということなのかも知れない。

昭和から平成の間は良かったのかもしれない。それなりに人口は増加していたし、旅行にしても法事にしてもお祝いにしても、「団体」であることが多かったんだよね。だから、それに見合った設備投資をしたんだ。掛川に限った話じゃなくて、日本各地には大きな広間を持っている飲食店や宿泊施設がたくさんある。宿泊する部屋は狭いけれど、数十人で宴会ができる。それで需給バランスが満たされた。

団体よりも個人旅行が増えた今、大広間があることよりも宿泊する個室が広いことのほうが価値があるかもしれない。個人的にも、団体旅行を利用することはない。お客様の状況を観察していても、若い世代が団体旅行に参加しているのは珍しく見える。データに当たっていないのでよくわからないのだけれど、団体旅行のニーズは右肩下がりなのではないだろうか。あるとしたら、何かしらの明確なコンセプトを打ち出したものに限られそうだ。

あくまでも感覚でしか無いのだけれど、もし上記の想像が正しいのであれば設備を変更する必要がある。宿泊する部屋は広くしなくちゃいけないし、大広間は別のものにするか、新たな価値を創出する場所にならなくちゃいけない。共同浴場よりも個室に温泉がある方が良いのであれば、それすらも変えていく必要があるのかも知れない。適当なことを言っているのだけれど、そういう妄想をしなくちゃならないのだろうと思う。

端的に言えば、ニーズに合わせて設備を変更しなくちゃいけないということだよね。

気がついていない経営者もいるかも知れないけれど、ニーズに合わせようという意識のある経営者だって多くいると思うんだ。ただ、その投資に踏み切れないでいる。というのが現状だろう。実際、うちも数年前に投資計画があった。そのための設計図も作ったし、発注の直前だった。パンデミックで急ブレーキをかけたわけだ。観光業の人たちと話をすると、似たようなことを聞く。

この状況下で、改めて投資をしようとすると投資する資金が枯渇していると気がつく。投資のためにストックしてきた資金は、パンデミックを乗り越えるために流出してしまった。銀行に話をもっていっても、直近の売上が低下しているために審査が以前よりもかなり厳しくなっている。これでは、投資も出来ないだろう。先輩方からもそうした声を聞く。他人事ではない。

ただでさえ消費者の財布の紐は硬いままなのだ。一発逆転の施策があればよいのだが、そういうわけにもいかない。数年間は、地道な営業を繰り返して投資のための土台を作り直さなければいけない。というのが現状だろう。

ところが、観光産業というマクロ視点に切り替えてみると、そうも言っていられない。資金のあるところが適切な投資を行い、それが出来ない小規模事業者はついていけなくなる。経営計画を練り直して、改めて資金調達をする。当たり前のことだが、そうするしかないような気もする。

冒頭に需給バランスのことを書いた。地域の消費という意味では、自然の淘汰が発生するだけのことだが、観光ということになるとそうはいかない。需要があるのに受け皿となる供給が不足するという事態が発生するのだ。せっかく良いコンテツがあっても、宿泊施設や飲食店、交通が脆弱では受け入れが困難になるのである。

事業者側は付加価値を上げながら、販売価格を上げていく努力をしなくちゃならないんだ。値上げというと、物価高騰によるものだという言われ方をするけれど、それだけじゃないと思うんだ。せっかくの需要に対して、受け入れられる社会の歯車として存在が必要、ということもあるんじゃないかな。

今日も読んでくれてありがとうございます。観光産業、観光行政に携わるものとしては、なかなか頭が痛い。ぼくも、その環のなかの事業者だしね。未来想像図をしっかり描いて、そこにたどり着くための道筋をいくつも考えて、都度取捨選択を繰り返して。先は長いけれど、まぁ面白い時代でもあるよ。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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