今日のエッセイ-たろう

基本的に「常識を疑ってみる」ようにしています。 2023年12月18日

信じる人の数が多くなると、それは真実になる。もちろん、真実ではないのだけれど、真実だということになってしまうことがある。けっこう思い込みってすごい力があるのだ。人数が多いと、その力は強大になる。

牛乳をたくさん飲むと身長が伸びる。というのは本当だろうか。今ではあまり信じる人はいないだろうけれど、ぼくが子供の頃はよく聞かされていた。給食の献立にそんなことが書いてあったかは記憶にないのだけれど、クラスの先生からは言われたことがある。アチコチで見聞きするものだから、しばらくはぼくも信じていた。

牛乳はタンパク質もミネラルも豊富。だから、栄養摂取という意味では良いのだろうけれど、それだけで身長が伸びるなんてことがあるわけがないんだよね。成長ホルモンがたくさん分泌されれば大きくなるだろうし、そのためには睡眠が大切だということになる。丈夫な骨を育てるためには適度な運動も必要だろう。これ、面白そうだからちゃんと調べてみようかな。

何度も繰り返される情報を真理だと思いこんでしまう。というのを、真理の錯誤効果というらしい。たった今知った。名前がついているほどにはよくある現象なのだろう。バンドワゴン効果といって、多くの人が指示する意見に信頼感を抱く現象があるけれど、真理の錯誤効果と関連していそうだな。沢山の人が同じことを言っていれば、何度も聞くことになって、信じてしまうじゃないかと思った。

食文化の歴史を調べていると、何度も「真理だと思い込む」シーンに出会う。よくあるのは「このスタイルこそ素晴らしい」みたいな、価値観の創出かな。

近い時代の話をすると、うどんがわかりやすい。「コシのあるうどん」って良いよね。と言われているし、そう思っている人も一定数はいる。けれど、コシがあるうどんが正義なんてことは、今まで「無かった」のだ。あるのは、コシのあるうどんを好む地域があるとか、好む人がいるという程度。地域差や個人差の話。柔らかいうどんの方が好まれる地域だって、ちゃんとあるのだ。むしろそちらのほうが多いかも知れないと思うことすらある。

長くてコシが強い。そんな謳い文句の大手チェーン店がある。あれは、ちょっとやりすぎらしい。コシがあるのを通り越して、コシが強すぎる。コシっていうのは、力を加えたときに反発する弾力があって、一定の力を超えるときに一気にプツンと切れる状態。調理科学的に言えば、そんな感じ。重要なのは心地よさということになるのだけれど、強すぎると「食べづらさ」が前に出てきてしまう。

高齢のうどん職人さんの話だと、そういうことだそうだ。硬ければ良い、長ければ良いってものじゃなくて、ちゃんと心地よく食べられるくらいの加減が難しいのだとか。言われてみれば、コシがしっかりした武蔵野うどんは、しっかりしているけれどちゃんと食べやすく心地よさが保たれているような気がする。

広告とかメディアの勢いは今も昔も大きな力。何度も刷り込まれるということもあるけど、「物心ついた頃からそうだった」という状況すら作り出す。生まれてからずっとこうだったのだから、伝統的にそうだったに違いない。という話は、今でも時々耳にする。たしかに半世紀近くの間変わらないものはそのように見えるけれど、実はほんの数十年のトレンドだったに過ぎないということもある。それに、本人は「生まれた頃から」と認識しているけれど、よくよく思い出してもらったりすると、そうでもないってこともあるんだ。

今日も読んでくれてありがとうございます。それって、ホントに常識?というのは、やっぱ大切なんだろうなあ。過去の話もあるけれど、未来においてもね。30年くらい前は、男性がメイクをするのは気持ち悪いと言われたこともあった。化粧水ですらね。今みたいな未来って信じられたかな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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