今日のエッセイ-たろう

情報が近いということ。 2022年8月2日

お客様の反応を見ながら商品を作る。ということは、お客様に喜んでもらう最短で最良の道かもしれない。一方で、名品名作はそこからは登場しないということもある。どこかで聞いた話だけれど、SNSマンガが人気だけど世の中を変えるほどの影響力を持ったマンガは、未だに登場していないというのだ。ぼくは、そういったものとの接点があまりないのでよくわからないのだけれどね。

SNSマンガの話はさておき、構造的にはあり得るな。とは思う。お客様が喜ぶことだけに集中してしまうと、価値の判断基準がそこに寄っていってしまう。悪いことではないけれど、潜在ニーズとか新たな驚きには繋がりにくいかもしれない。

なんだかんだとモノづくりをしている身としては、心がキュッと引き締まる話だ。

たべものラジオも、ずいぶんとたくさんの人が聞いてくださるようになった。とてもありがたいことだ。単純に、嬉しい。ぼくがオモシロイと思っていることを喋るだけのコンテンツ。にも関わらず、それをオモシロイと感じてくれる人がこれだけいるのね。びっくりだ。元々、たべものラジオはぼくがオモシロイと思ったことを弟に喋ってるだけ。弟も面白いって思ってくれるかどうかだけだ。ぼくは、ずっと「ぼく自身」と「弟」をオモシロがらせることだけを基準に話してきた。

商売にするのなら、聞いてくれれる人たちが聞きたいことを喋るのが正解なのかもしれない。なんだけど、それは違うんだよなあ。リスナーさんが面白がってくれることを喋るのは、それはそうなんだけど。なんかしっくりこない。かと言って、無視するのとも違う。なんだろうな。

ミュージシャンなんかが発言してるのを雑誌で読んだ。似たようなことがあるらしい。売れる曲には、そのための曲作りというのがあるらしいんだ。このパターンで作ると売れるというようなフォーマットがね。ミュージシャンはある程度は売れていないと、自分がやりたい音楽をやることも出来ない。だけど、一方でやりたい音楽じゃないものを世の中に産み落とす行為自体が嫌だってことになるらしい。ミュージシャンでは無いけれど、なんとなく理解できるんだよね。

これは、ラジオだけのことじゃないかもね。世の中のクリエイティブなものは、全部そうなのかもしれない。どこかで、うまく消費者の声を無視することが必要。そういうことなんだろうか。世の中に、未だ見たことがないようなモノゴトを作り出すには、既存の意識から外れ値を作り出すことになる。新しいものが全てだとは言わないよ。どちらかというと、時間の風化に耐えてきたものに価値を感じる方だから。ただ、面白いコンテンツというのは、作り手が面白いと思っているものを「ねぇ、これ面白いから使ってみて」というような感覚が必要なんだろうと思うのだ。

以前、観光について行政側の人と意見を交わしたことがある。だいたい、どこの行政区でもその地域をアピールするような動画を作っている。既に持っている。で、だいたユーチューブにアップされているよね。見ると、みんな似ているんだ。すごく客観的。とても美しいものが多いし、面白いネタが満載のものも多い。なんだけど、どんなに再生数の多い動画でも、誰かの旅行動画には勝てなかったりするんだ。

この違いってなんなのかな。って、考えてみると、主観があるかどうかなんだと思うんだよね。この人の目にはこう写ったよ。別の人から見たらまた違って見えるよね。ということが表現されていると、人は面白がるらしい。いや、他の人は知らないけれど、ぼくは美味しいって思っているよ。というような発信が出来るかどうかなんだろうなあ。

主観と主観と主観とが入り混じって、一方で事実は事実として歴然としてある。

そうか。事実は大切だけれど、それを解釈するのが楽しいってことか。自分はこう解釈したけれど、この人は違う解釈してるのか。っていうのが面白いんだろうか。

そうそう。歴史の勉強をしていると、いろんな説があるもんね。人ぞれぞれに解釈が違っていたりする。似たような説でも、ちょっとずつディテールが違う。事実らしきことと、解釈。事実を知るのが楽しいときと、その解釈の仕方が楽しいという時があるのか。そういうことか。なるほど。

SNSが発達した現代は、特に注意が必要かもしれない。消費者との距離がとても近いからね。良いことがある反面、主体的な世界観を維持するのが難しいという側面もある。影響は絶対に受けるから。このあたりが、現代人に求められるスキルのひとつなのかもしれないなあ。情報との距離感を調節すること。いい意味で、うまく無視する能力というか。うーむ、うまい表現が見つからない。

今日も読んでくれてありがとうございます。表現が定まらないままに書き出してしまった。まぁ、いつものことだけれど。これは誤解を招きそうだよなあ。料理ってさ。お客様の知っている範囲でしか注文してもらえないんだよね。だいたいは。だから、時々変なものを作って提供しちゃう。マイナーだったり、思いつきで作ったものだったり。そうすると、お互いに世界が広がって面白い。そういう価値の提供もあるんだろうな。

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武藤 太郎

1978年 静岡県静岡市生まれ。掛川市在住。静岡大学教育学部附属島田中学校、島田高校卒。アメリカ、カルフォルニア州の大学留学。帰国後東京に移動し新宿でビックカメラや携帯販売のセールスを務める。お立ち台のトーク技術や接客技術の高さを認められ、秋葉原のヨドバシカメラのチーフにヘッドハンティングされる。結婚後、宮城県に移住し訪問販売業に従事したあと東京へ戻り、旧e-mobile(イーモバイル)(現在のソフトバンク Yモバイル)に移動。コールセンターの立ち上げの任を受け1年半足らずで5人の部署から200人を抱える部署まで成長。2014年、自分のやりたいことを実現させるため、実家、掛茶料理むとうへUターン。料理人の傍ら、たべものラジオのメインパーソナリティーを務める。2021年、代表取締役に就任。現在は静岡県掛川市観光協会副会長も務め、東海道宿駅会議やポートカケガワのレジデンスメンバー、あいさプロジェクトなどで活動している。

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